月曜日, 10月 16, 2006

小笠原航路-空路vs超高速船(TSL)

都心から南に1000km離れた小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」とも呼ばれ、特異な動植物形態を形成していることで知られています。しかしアクセスは、小笠原諸島へは東京港から25時間半掛かる定期船のみで、救急患者の搬送は海上自衛隊の飛行艇に頼っているのが現状となっている様です。
環境保護問題で空港開設が白紙撤回となってからは、国主導で開発した超高速船テクノスーパーライナー(TSL)就航が脚光を浴び推進されて来ましたが、原油高で大幅な赤字が見込まれ、就航直前の昨秋取り止めとなってしまいました。

最近、何故かこのTSL検討再開がニュースとなっていますが、国と都の攻めぎ合いにしか見えないのが残念です。

都は定期航空路を開設する為、具体的な実施手順などを盛り込むことを決めた。航空路開設への約2300人村民の合意を得た上で、都と村が協議会を設置、村民に加え航空関係者や環境保護の専門家らから意見を聞く会議を今年度中に実施し、建設予定地を固める。現段階では都が設置・管理する第3種空港として、旧日本軍の飛行場があった父島西部の洲崎地区に設置する案が有力とみられる。

これに対して国交省は、超高速船「テクノスーパーライナー」(TSL)の小笠原航路就航を再検討すると表明、TSL就航を都と再検討することで合意し、国交省と都が協議会を設置することに合意したことを明かにしたと報じられた。

しかし、この合意も国交省の一方的な発表で、石原都知事は「正式な協議会をつくる必要は無く、担当者が話し合えばいい」と語り、隔たりを見せている。
石原都知事は9月22日の記者会見で、年間約30億円の赤字が見込まれるなどの問題点を挙げて「すぐに結論は出ない、財政的に国がどこまで金を出すか。長期的に出資を続ける意思があるかだ」と語り、就航は困難との見解を示している。


昨年は赤字20億円と発表されていたのですが、今年の更なる原油高騰で赤字幅が増大した様です。TSLはホーバークラフトのように船体を空気圧で浮上させる方式で、推進主機が軽量小型ガスタービンですのでディーゼルと違って燃料として高価な軽油だけしか使えないのが主原因です。
しかし、物流的には航空路より海上航路の方が圧倒的に有利で、運賃も空路に比べて半額と考えられますので、都と村が設置する協議会内でも、国と都の攻めぎ合いでなく環境影響の少ない代替案として比較検討を続けて貰いたいものだと思っています。

テクノスーパーライナー(TSL)は1000トンの荷物を積んで、50ノット(時速約93km)のスピードで500海里(約930km)の距離を航行するという構想で、平成元年度(1989年)にスタートした国家プロジェクト研究開発で、トラック100台分の貨物を海上輸送することで、安価な輸送費と道路渋滞を解決出来ると言うのがプロジェクトの売りでした。
平成6年度から駿河湾で防災船兼カーフェリー「飛翔」の総合実験が実施され、開発目標がほぼ達成されたとし、小笠原TSLが建造され、2005年11月に実船就航されるとして注目を集めていたのです。
しかし石油価格高騰で、当初予想された経済性が得られず、補助金無しには実船就航が難しい状況となり、事態は暗転してしまいました。推進主機が軽量小型ガスタービンですのでディーゼルと違って燃料として重油が使用できず、高価な軽油だけしか使えないと言うのが主原因でした。
プロジェクトを始めた時点では石油価格は20ドル/bbl程度、推進中は14~15ドル/bbl迄低下していたのですが、中国経済の躍進で石油需要が一挙に高まり、50ドル/bblを越えてしまい、リスクヘッジの限界を超えてしまった様です。

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