月曜日, 2月 04, 2008

中国名文選-岩波新書(興膳 宏 著)

日本語は常に変化しつつありますが、原則的には常用漢字2000字を主体として平仮名を使って送り仮名として読みやすい様にし、外来語は原則カタカナ(片仮名)とし表記され、各々の区別がつきやすい様に構成されています。
近頃は漢字で表現出来ることも、英語をカタカナ表現にした日本語の方が恰好が良いと言う風潮から、その様な会話・文章が幅を利かせるようになりましたが、1000年近く使われて来た漢字中心の日本語は今後も廃れることは無い様に思われます。

中国古典は永く日本人の教養を形作って来ましたが、先人が考案した漢文訓読というユニークな読解法が日本語でも違和感無く理解出来ると言うことが大きな役割を果たし、又、それらの簡潔な表現は日本語の文章に影響を与えて、今でも一部は「4文字熟語」として脈々として受け継がれています。

しかし、序章の冒頭に述べられている事実は目から鱗の様に感じられます。

中国では、かなり早い時期から書き言葉の文体が話し言葉から独立して、独自の発達を遂げた。書き言葉によって綴られた文章を「文言」と言うが、その特徴は、口頭で話される言葉を逐一写すのではなく、言わんとする意の要所を摘んで、簡潔に掬い上げることにある。

その「文言」も種々の変遷があるらしく、次の様に紹介しています。

「文言」も「史記」で完成を見ますが、歴史を辿るに従って、六朝時代(3~6世紀)には形式を重んずる文体が発展して技巧を尊重することとなります。しかし、8世紀後半の中唐となって復古運動が推進され、形式に縛られず自由に表現出来る中国のルネッサンスともされる「古文運動」が起きて来ます。

種々古典から選び抜いた名文は、孟子・荘子から宋代の蘇軾・李清照まで12人の文章家による内容・形式もさまざまな代表文、読みどころを押さえながら訓読し、白文も添えて、分かり易い解説がその味わいを伝えてくれます。

新書版で僅か12名文しかありませんので、気軽に中国古典を親しめる機会を提供してくれます。各項目別に、興味が出ましたら詳細な書籍を見つければ良さそうで、日本語ルネッサンスへの恰好な入門書に思えます。