金曜日, 10月 20, 2006

超高輝度LED懐中電灯-F3級LED

此処10年程愛用して来たハロゲン懐中電灯Magliteより、高輝度で超寿命と言われています超高輝度LED懐中電灯を購入して来ました。

製品のメーカは“GENTOS”と言い中国製ですが、核心部品の超高輝度LEDはアメリカ製ですので不安は感じませんでした。近年、超高輝度LEDの開発が急速に進められている様で、店頭でもF1級、F3級、F5級の三種類が展示販売されていました。
LEDの寿命は10万時間と言われていますので、従来の様に電球の交換をする必要が無いのが最大の特色です。
F1級は高輝度LEDより12倍明るいもので約3000円、F3級は輝度30倍で6000円、F5級は50倍で9000円となっていましたので、中庸を選べば不満は無かろうと思いF3級を選択しましたが、一寸間違ったかも知れません。

開梱してみますと使用電池は通常の単3電池でなくリチウム電池でした。
同梱されていたリチウム電池を入れスウィッチオンして見ますと、猛烈に明るいと言うより明る過ぎるのです。
パッケージ裏側をよく見ましたら、小さな字で注意書きが次の様に表示されています。

「明るさは従来の高輝度LEDの約30倍、普及型LEDに比べると90倍に達する為、目に大変危険です。光源への直視、動物への照射は絶対にお止め下さい」

これでは、暗い屋内での機械装置・電気機器を調査するには良いのですが、野外・屋外での使用には適しませんし、凶器にもなりかねません。
従来のハロゲン懐中電灯Magliteは目を傷める程の輝度はありませんので、野外・屋外では使い続ける必要がありそうです。

プロ用でもF1級で十分だった気がしていますが、購入したF3級LEDライト、仕方がありませんので、注意書きに準じて用途別(装置調査LEDライト、その他一般Maglite)に使い分けることにしようと思います。
広く使える買い物をしようとしたのですが、「過ぎたるは及ばざるが如し」とオーバースペック気味で失敗だったかも知れません!

超高輝度白色LEDについては、インターネット検索しますと次の様に紹介されています。

超高輝度白色LEDは熱効率が高く且長寿命(10万時間)なので、次世代の照明システムとして有望視されている。この開発の成果として、液晶テレビのバックライトとしても使われるようになって来ている。

従来液晶画面のバックライトには蛍光灯に似た冷陰極管が使われ、その寿命は約1万~5万時間、メーカーが公称する寿命時間は、製品出荷時の最も明るい状態で使い続けて、明るさが半分になった状態までの時間です。ユーザーによっては、少し暗めで使用していれば、寿命はさらに伸びます。ただし、冷陰極管は家庭で使われる蛍光灯と同様、オン・オフを繰り返すことで管の内部が黒くなり、暗くなることがあります。こうなると、規定の寿命時間までは持たなくなります。


超高輝度白色LEDをノートパソコンに適用することで、綺麗で明るい画像を得ると同時に電池消耗量が減りますので、技術的には良いようです。
しかしながら、現在の販売価格では高すぎ適用不能で、現在の普及型LED相当まで価格が下がることを期待します。

月曜日, 10月 16, 2006

小笠原航路-空路vs超高速船(TSL)

都心から南に1000km離れた小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」とも呼ばれ、特異な動植物形態を形成していることで知られています。しかしアクセスは、小笠原諸島へは東京港から25時間半掛かる定期船のみで、救急患者の搬送は海上自衛隊の飛行艇に頼っているのが現状となっている様です。
環境保護問題で空港開設が白紙撤回となってからは、国主導で開発した超高速船テクノスーパーライナー(TSL)就航が脚光を浴び推進されて来ましたが、原油高で大幅な赤字が見込まれ、就航直前の昨秋取り止めとなってしまいました。

最近、何故かこのTSL検討再開がニュースとなっていますが、国と都の攻めぎ合いにしか見えないのが残念です。

都は定期航空路を開設する為、具体的な実施手順などを盛り込むことを決めた。航空路開設への約2300人村民の合意を得た上で、都と村が協議会を設置、村民に加え航空関係者や環境保護の専門家らから意見を聞く会議を今年度中に実施し、建設予定地を固める。現段階では都が設置・管理する第3種空港として、旧日本軍の飛行場があった父島西部の洲崎地区に設置する案が有力とみられる。

これに対して国交省は、超高速船「テクノスーパーライナー」(TSL)の小笠原航路就航を再検討すると表明、TSL就航を都と再検討することで合意し、国交省と都が協議会を設置することに合意したことを明かにしたと報じられた。

しかし、この合意も国交省の一方的な発表で、石原都知事は「正式な協議会をつくる必要は無く、担当者が話し合えばいい」と語り、隔たりを見せている。
石原都知事は9月22日の記者会見で、年間約30億円の赤字が見込まれるなどの問題点を挙げて「すぐに結論は出ない、財政的に国がどこまで金を出すか。長期的に出資を続ける意思があるかだ」と語り、就航は困難との見解を示している。


昨年は赤字20億円と発表されていたのですが、今年の更なる原油高騰で赤字幅が増大した様です。TSLはホーバークラフトのように船体を空気圧で浮上させる方式で、推進主機が軽量小型ガスタービンですのでディーゼルと違って燃料として高価な軽油だけしか使えないのが主原因です。
しかし、物流的には航空路より海上航路の方が圧倒的に有利で、運賃も空路に比べて半額と考えられますので、都と村が設置する協議会内でも、国と都の攻めぎ合いでなく環境影響の少ない代替案として比較検討を続けて貰いたいものだと思っています。

テクノスーパーライナー(TSL)は1000トンの荷物を積んで、50ノット(時速約93km)のスピードで500海里(約930km)の距離を航行するという構想で、平成元年度(1989年)にスタートした国家プロジェクト研究開発で、トラック100台分の貨物を海上輸送することで、安価な輸送費と道路渋滞を解決出来ると言うのがプロジェクトの売りでした。
平成6年度から駿河湾で防災船兼カーフェリー「飛翔」の総合実験が実施され、開発目標がほぼ達成されたとし、小笠原TSLが建造され、2005年11月に実船就航されるとして注目を集めていたのです。
しかし石油価格高騰で、当初予想された経済性が得られず、補助金無しには実船就航が難しい状況となり、事態は暗転してしまいました。推進主機が軽量小型ガスタービンですのでディーゼルと違って燃料として重油が使用できず、高価な軽油だけしか使えないと言うのが主原因でした。
プロジェクトを始めた時点では石油価格は20ドル/bbl程度、推進中は14~15ドル/bbl迄低下していたのですが、中国経済の躍進で石油需要が一挙に高まり、50ドル/bblを越えてしまい、リスクヘッジの限界を超えてしまった様です。

日曜日, 10月 15, 2006

サルトル(思想の多様性)-J.P. Sartre

昨年はジャン=ポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)生誕100年だったそうで、フランスでは3月から国立図書館で「サルトル展」が開かれ、6月にソルボンヌで生誕記念式典が行われた様ですが、日本では既に「過去の人」として位置付けられているのでしょうか、あまり話題になりませんでした。

我が家の書棚にはカミュの「異邦人」、「ペスト」、「シジフォスの神話」等が散見されますが、サルトルに関しては僅か「革命家反抗か」と言う書籍位しか見つけることが出来ません。

サルトルは第二次世界大戦後、実存主義の旗手として活躍し、評論や小説、劇作を通じて、実存主義思想は世界中を席巻することになり、日本でも大きな影響を与えました。

しかしながら、1950年には一転マルクス主義に転向して実存主義作家カミュとの論争となりました。
その後、ソ連の立場を概ね支持しながらも、ソ連による1956年のハンガリー侵攻、1968年のチェコスロヴァキア侵攻「プラハの春」に対する軍事介入には批判の声を上げ、対峙することとなりました。

その間、1964年にはノーベル文学賞に選ばれましたが、「神格化されるには値しない」と言って、これを辞退したことは良く知られています。

1980年4月に逝去してからは、これらの事例に対する一貫しない態度に誹謗と中傷が集まり、彼の著作への封殺が始まりましたが、1990年には逆に彼の訴えていた「一貫したヒューマニズム」の復権が始まり、今に至っている様です。

サルトル-岩波新書(海老沢 武著)

まえがきに次の様な著者の思いを綴っています。

20世紀は、大量に人間が人間を殺し・監禁した世紀であり、サルトルは幸福で無かったこの20世紀の様々な出来事に対し、その都度自分の立場を明らかにし、精力的にメッセージを発信し続けた。意見を異にするにしても、同時代人には比類なき対話者だった。
21世紀の人間にはどうだろう。21世紀は民族と宗教の時代とも言われるが、時代の提出する問題は大きく変わっていない。問題は生の意味であり、自由であり、人間的なものへの破壊にどう抵抗するかだからだ。
サルトルの著作は残されているので、問いかけてみよう。私たちの問いを問い直させ、幅を広げ、深化させて、生きてゆく勇気を、時には与えてくれるからだ。


僅か200頁しかない新書版ですので複雑な彼の想いが十分描かれていない可能性もあり、その内違った思いが生まれましたら、別の日記に記載してみようかと思っています。

金曜日, 10月 13, 2006

対話に学ぶ-「戦争の罪を問う」Karl Jaspers

どうも制定60年を過ぎた現憲法の「戦力放棄宣言」から「自虐史観」となり、中韓からの干渉を招いて国益を損ねているとの解釈から、教育基本法改正から憲法改正へと持って行きたいのが、自民党政権の方針と見えます。

歴史観修正方式には3修正主義があるのですが、国民的論議も殆んどされずコンセンサスを得てはいません。

原理主義的歴史修正:
先の大東亜戦争を欧米植民地主義に対抗する自衛戦争とし、日本の戦争犯罪を否定する。
国民主義的歴史修正:
大東亜戦争を不正な侵略戦争と認めるが、改めて国民的な歴史を形成しようとするネオ・ナショナリズム。
市場主義的歴史修正:
歴史論争の中に倫理的判断や責任意識を導入せず、歴史論争では多元的な物語があって良いとする。

昨今、一部の教育委員会では「原理主義的歴史修正」を施した“新しい歴史教科書をつくる会”編纂の教科書を採用して来ている様ですが、未だ大勢を占めるには至っていません。

そんな折、偶然読んだヤスパース「戦争の罪を問う」(平凡社ライブラリ)、既に60年を経過していますが、賛成意見より寧ろ反対意見を尊重しつつ対話から真の方向を学ぶ態度が大切と説いているのには、現在でも一読に値すると思われました。

ヤスパースは戦争の罪を4つに分け、それぞれの罪の種別に応じて、取るべき責任・償いの仕方も異なり、その事実をしっかりと受け止めることに人間の使命があるとしています。

政治的な罪:戦争を起こした戦争指導者たちの罪。
法律上の罪:人道平和に対する罪、戦争犯罪。
道徳的な罪:自分が戦争に参加したことによって相手を殺したりすることに対する罪。
形而上的罪:共有した戦時における不法と不正に対する罪で、その審判者は神のみ。

戦勝国の弾劾裁判ともされる「ニュルンベルク裁判」も、「敗戦国」の人間として転換の好機と捉えることで正当なものと判断し、それらの困難を乗り越えるものは、権力への渇望・迎合で無く「公正」な思考に於いて、 内面的な革新と生まれ変わりをもたらすのであり、そのことこそが「戦勝国」に、平和への「責任」を突きつけることになると説くのです。

ヤスパースは冒頭次のように述べて対話の重要性を指摘しています。

我々は語り合うと言うことを学びたいものである。つまり自分の意見を繰り返すばかりでなく、相手の考えている所も聞きたいものである。主張するだけでなく、理の在る所に耳を傾け、新たな洞察を得るだけの心構えを失いたくないものである。
反対者は、真理に到達する上で、賛成者より大事である。反対論のうちに共通点を捉えることは、互いに相容れない立場を早急に固定させ、そう言う立場との話し合いを見込みの無いものとして打ち切ってしまうより重要である。


戦争世代が生物学的にもどんどん亡くなって行き、戦後世代が今後どの様に動いていくのかも喫緊の課題で、被爆体験を含めて戦争体験を記憶として新しく作り上げていくのかと言う問題になりますが、現在提唱されつつある歴史修正主義は、その記憶を修正してしまうことが起こるような気もします。

日曜日, 10月 08, 2006

低硫黄軽油-ディーゼル復権?

2003年10月から、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県の条例で定める粒子状物質(PM)の排出基準を満たさないディーゼル車の走行が禁止されて以来、真っ黒な排煙が少しは軽減された様な気がします。
首都圏の大気汚染は深刻な状況にあり、浮遊粉塵(PM)は気管支喘息などの呼吸器系の疾患や肺がんなどの健康への悪影響や、花粉症とも関係があると疑われていますのですから、もっと早く実施すべきでした。それに加えて、硫黄酸化物による大気汚染軽減の為、東京都は石油連盟に対し、低硫黄軽油の早期供給を要請して来ました。現行の軽油のJIS規格では、軽油中に含まれる硫黄分は500ppm(ppm:100万分の1)以下ですが、低硫黄軽油は50ppm以下へと硫黄分を低減させた軽油です。

ディーゼルエンジンは貨物輸送には最適のエンジンとされて来ました。ガソリンエンジンに較べ燃料効率が30%良いこと、軽油がガソリンに較べて価格が30%安いこと等が大きな理由でした。トータルで考えますと半分の燃料経費で済むのです。しかし、ディーゼルエンジンでは燃料を自然発火させる為、圧縮比を高くしなければならず(電気火花機関ガソリンエンジンの3倍)、それが振動大、浮遊粉塵(PM)、窒素酸化物(NOx)排出増の要因となっています。それに加えて、坂道での動力増強の為に燃料大量噴射しますので、未燃分による黒煙・臭気が酷く、すっかり悪者扱いとなりました。

その為、日本では乗用車でのディーゼル搭載は無くなってしまいましたが、欧米では未だに燃料経済性の面から乗用車でも一定の位置を占めています。ディーゼルエンジンの燃料効率が30%良いと言うことは、二酸化炭素排出が30%少ないと言うことですから、その面から復権を狙っている様です。

米国機械学会誌2005年1月号に「ディーゼル代替:The Diesel Alternative-Cleaner, quieter versions may be coming」と言う記事がありましたので、要約紹介致します。

貨物輸送の生き血であるディーゼルの技術改善が実施中で、燃料直接噴射と電子制御による二段燃焼改善により振動・粉塵・窒素酸化物問題を改良させていますし、日本と同様に粒子状物質(PM)減少装置も2007年米国でのディーゼル全車モデルから装着されることになりました。硫黄酸化物排出改善の為、米国環境保全局(EPA)では2006年から日本より厳しい15ppm低硫黄軽油を義務づけています。窒素酸化物(NOx)排出に対しては、選択触媒還元装置(SCR: Selective catalytic reduction:尿素噴射による窒素酸化物分解)によって大気汚染規制値適合を目指す方向です。問題は製造コストで、現状では約1500ドル余計に掛かることになりますので、何とか半減以下とし、2008年モデルでは500~600ドル追加程度にしたいとのことです。


改良されたディーゼルは温暖化防止の観点から、トラックだけでなく乗用車用エンジンとして復権なるでしょうか? 現状エコカーとして知られるハイブリッド車もガソリンエンジンとの組み合わせよりもディーゼルとの組み合わせの方が二酸化炭素削減には有利になるのですが・・

燃料電池車も原料を化石燃料に頼る現状では、二酸化炭素排出率はそれ程改善される訳ではありません。


このエンジンの発明者はルドルフ・ディーゼル、普く全世界に使って欲しいとの彼の希望はナチスドイツによって阻害され、殺害されたと言われています。

土曜日, 10月 07, 2006

家庭用燃料電池-分散電源ビジネスとなるか?

エネルギー取得時に於けるCO2削減の切り札として、燃料電池が永らく注目を浴びて来ました。燃焼を伴わない、水素と酸素ガスから水にすると言う化学変化によってエネルギーを得る、中学校理科の実験「水の電気分解」を逆にした理屈ということで、発電効率が高いこと、排出されるのは水だけであること等、環境問題とエネルギー問題の同時解決が目論まれていたのです。

   種類         作動温度     発電効率    用途
リン酸型(PAFC)     約200℃     45%以下    小規模コージェネ発電、バス・トラック
固体高分子型(PEFC)   100℃以下  40%以下    分散電源、自動車、パソコン
溶融炭酸塩型(MCFC) 約650℃     50%以下    大規模コージェネ発電
固体電解質型(SOFC) 約1000℃     50%以上    中・大規模コージェネ発電

これで水素製造が太陽、風力、水力などの自然エネルギーによる水の電気分解で出来れば環境問題は解決出来るのですが、エネルギー出力総量が小さくそうは問屋が卸しません。 現在は水素を得る為には炭素を含む化石燃料を原料としますので、改質器の中で二酸化炭素、猛毒の一酸化炭素が発生しますので、除去しなければなりません。
特に12%も入っています一酸化炭素は、二酸化炭素変成プロセス過程を経て、排気中に10PPM以下となる様に設定されています。従って、排ガス中には相当量の二酸化炭素(CO2)が含まれていますので、CO2発生率は従来発電方式と殆ど同等となってしまいます。
化石燃料を使う限り、その宿命は変わりません! 広告の一方的な「うたい文句」に惑われないことがユーザとしても肝要です。

兎に角、新型大型火力発電所の最新型複合サイクル発電効率が最高60%ですが、固体電解質型(SOFC)とガスタービンを組み合わせることで70%効率が達成出来るとされ、米国エネルギー省(DOE)が技術開発に邁進しています。

中でも、自動車への適用開発過程から特に固体高分子型燃料電池(PEFC)の技術が進み小型化していますので、波及して家庭用分散電源、パソコン・携帯の電源として期待されていました。但し、上記の目標効率は達成出来ず、熱効率30%程度ですので、分散電源として発電単価が買電単価より高くなってしまう懸念はあります。
もっと問題なのは機器コストの高さで、単位kW当たりの価格が通常火力では10万円程度なのですが、燃料電池方式では10倍の100万円になってしまうので、現在開発の主目的は価格低減にあります。通常自動車の出力100kWとすると、エンジンだけで1000万円となりますので、ガソリンエンジン自動車にとても太刀打ち出来ないのです。

しかし昨年、将来の価格低減を見越して、東京ガスが家庭用燃料電池の発売を宣言しました。
容量は僅か1kWですので家庭需要の半分を賄う程度に過ぎませんが、2007年の電力完全自由化に向けて、ガス会社が電力会社に先駆けて分散電源ビジネス確保に先手を打ったと言えるのでは無いかと思います。
しかし「急いてはことを仕損じる」、消費者ユーザは当面様子見をするのが賢明だと思います。電力会社も魅力ある提案をして来る筈です。

インターネットニュースでは次の様に報じられています。
東京ガスは、松下電器産業、荏原製作所と共同開発を進めてきた家庭用燃料電池を2005年2月から一般に貸し出す、と発表した。
東ガスは、家庭向けに商品化されるのは世界初、としている。他の都市ガスや石油会社も様々な方式を開発中で今後、商品化が続きそうだ。
燃料電池は、水素を酸素と化合させると、電気・熱と水が発生することを原理にしている。東ガスの装置は熱電併給(コージェネレーション)方式で、都市ガスから取り出した水素を使って発電。排熱も利用してお湯をわかし、給湯や暖房に使う。発電・熱回収の装置(高さ約1m、幅80cm)と貯湯槽(高さ約2m、幅約80cm)の二つからなり、出力は1kWで、4人家族の標準世帯が使う電力の60%をまかなう。
2006年3月までに200台を貸し出し、期間は10年間で使用料は100万円。利用者にはガス料金を3年間3%割り引く。通常のガス・電気利用に比べ、標準世帯で光熱費を年間約6万円節約でき、エネルギー消費量も26%減るという。
2009年度には年間1万台の普及を見込んでいる。 東京ガスは「今は採算性を考えず、先行投資のつもりで普及させたい」と話す。
今後、1万3千時間(約3年分)程度の電池寿命を4万時間に延ばすことや、販売価格目標(50万円)に見合う製造コスト(現行数百万円)の引き下げが課題だ。
大阪、東邦ガスは東ガスの後を追い、同様の製品を2005年度中に投入する計画。大ガスは京セラと共同で、発電効率の高い別タイプも開発中で、2008年度の商品化をめざしている。
石油業界では新日本石油と出光興産がそれぞれ2006年度の商品化を目標に、灯油から水素を取り出す方式の燃料電池を開発中。
次世代家庭エネルギーの主役の座をめぐる開発競争の中から、さまざまな商品が登場しそうだ。

工業的大型酪農からのBioFuel

一見何の関係も無さそうな両者が結びつくのは、よく落語で使われる「風が吹けば桶屋が儲かる」と言った三題噺ではありません。そうした研究があるらしく、現在米国イリノイ大学で行われている様子です。


この写真は酪農関係の雑誌でも無く、環境関連のものの表紙でもありません。最近郵送されて来ました、歴とした米国機械学会の副学会誌「Power & Energy」の表紙です。

「隠れた資源:新技術は豚一頭一生分の糞尿廃棄物を0.5バレル(80リットル)の石油に変換します」として、記事には下記の様に記載されています。

米国での工業農業は巨大な規模で実施されています。毎年1億頭を越える豚が屠殺されて食卓に供されていますが、これは各家庭1頭分に相当します。しかし、豚は同時に相当量の糞尿を生み出しまして、環境汚染の一因ともなって来ました。豚舎の排水、汚泥だけで無く、悪臭汚染が大きな問題となって来たのです。豚酪農の環境に対するこれらの深刻な影響は、政府各局、公共機関、酪農業界の関心事となり、解決策を模索中です。糞尿廃棄物は嘗て価値のある肥料として使われたのですが、大規模酪農の進展によって業界の大きな負担となってしまったのです。
イリノイ大学で行われている研究は、逆手を取って、これら大量の糞尿を熱化学変換プロセスでエネルギー源としようとの試みで、再生可能な代替燃料を生産しようとするものです。熱化学変換プロセスは1970年代、主として石炭、泥炭、廃木材を無酸素状態の雰囲気で石油資源にしようとの研究テーマで、技術的には納得出来る結果を得ていたのですが、経済効率が低く、小規模の実験プラントで留まって頓挫してしまいました。今回の研究は、原料が石炭等の燃料では無く、酪農家にとって重荷となっていた廃棄物処理ですので、経済効率が向上し、環境影響の面からも成果が期待されています。実験室的には廃棄物固体の63%がベンジン主体の代替石油に変換され、発熱量は30500kJ/kgで高炉用燃料とほぼ同じという結果が出ています。


日本でも酪農農家から出る廃棄物は、肥料として再利用されるだけでは無く、発酵プロセスを使ってメタンガス生産が試みられていますが、工業規模とはなっていないのが現状です。
それにガスより液体の方が貯蔵・輸送が断然有利なので、出来れば代替石油を生産する方がベターに思えます。WTO農業交渉の進展次第では、日本でも工業農業の導入が真剣に検討されなければなりませんが、米国のこの様な研究は大きな助けになりそうです。

金曜日, 10月 06, 2006

地球温暖化防止-コジェネとCHP

地球温暖化防止には、エネルギーの効率的な利用が望まれますし、化石燃料を大量に消費する従来方式の効率化は不可欠です。従来方式から排熱利用を促進することで10%の効率改善はそれ程困難なことではありません。
原子力発電に依存する方法は、廃棄物処理の困難さ、高価格建設コスト、寿命後の解体処理問題から見て、最善とは思われません。

20年程前から米国でコジェネレーション(Cogeneration)と呼ばれ、発電用熱機関の排熱を利用して70%以上のエネルギー効率が見込まれるものでした。技術的にはそれ程先進的なものではありませんので、あっと言う間に米国全州に流布することになりました。日本でも1980年代後半から導入が始められ、当初は「熱併給発電」と言う日本語が使われましたが、近頃では「コジェネ」と言うカタカナ米語が使われる様です。ヨーロッパでも日本と同時期に導入が始まり、「熱併給発電」に相当する「CHP(Combined Heat & Powerの略)」が使われ、以来「コジェネ」と言う米語が充てられることはありませんでした。ヨーロッパの誇りかも知れません。

カタ仮名英語が多くて辟易もするのですが、Cogenerationは“二つの有益物を生み出す”と言う意味で、CHPに較べてなかなか良い造語だと思います。 Tri-Generationとの表現もあり、“電気出力、蒸気出力、排ガス出力”となれば最善となりますが殆ど使われることはありません。

我が家には2ヶ月毎に、ロンドンで発行される「Cogeneration & On-site Power」が郵送されて来ますので、今月号から環境先進国ドイツのCHP協会会員の記事を紹介します。

「欧米に於けるCHPの明るい未来」再生可能な風力、太陽電池、水力発電での拡充は、長期的には熱併給発電(CHP)のポテンシャルを大いに減じることになります。しかしながら、中・短期的には情勢は異なりまして、CHP開発は殆どの国々で市場導入が活発になることが予想出来ます。ヨーロッパでは、長い間余裕のある発電容量を享受して来たのですが、現在稼働中の発電所は古くなり性能劣化が顕著になっているのです。2010~20年には、ヨーロッパの大部分の発電所が更新時期を迎えているのです。又、幾つかの国々では、原子力発電所の段階的廃止を決めていることも影響があります。次世代の発電所計画決定には、排出物(二酸化炭素排出)取引が、大きな要素となり、その意味でCHP開発には有利な状況のなっている様に思えます。電力価格の上昇傾向もCHP開発には望ましい方向ですが、化石燃料の天然ガス価格の価格高騰で、一部は相殺されてしまうこともあります。総括的に見ますと、ヨーロッパでの近未来CHP開発は、過去の情勢に較べて明るくなっていると考えられます。

日本でも、再生可能な風力、太陽電池の導入が進められ注目を集めてはいますが、如何せん、発電容量が小さすぎて、需要に見合うことはあり得ません。
原子力発電の頓挫している現在、現存の火力発電所を熱併給発電方式(コジェネ又はCHP)にて更新、効率アップを図って、二酸化炭素排出抑制に動かなければなりません。

木曜日, 10月 05, 2006

エタノールから水素製造-果たして得策か

現在開発が進められている燃料電池は水素と酸素を化合させてエネルギーを取り出し、結果として水を創り出すだけですので二酸化炭素排出も無く究極のエンジンと言われています。
現在は種々の電解質形式による大規模化、効率向上が押し進められていますが、その他寒冷地対策も問題となっています。又、燃料となります水素の確保が問題で、現在色々な製造方法がありますが、工業的には化石燃料の天然ガスやメタノールから製造せざるを得ないのが難点です。
太陽光発電で海水の電気分解で製造出来れば無尽蔵となりますが、工業的に大規模にするには無理なのが現状です。

朝日新聞に拠りますと、ミネソタ大がバイオマスによって生産されるエタノールから水素を製造する方法を発表したと言うことです。エタノールは、米国ではトウモロコシ等の植物から年間100億リットル生産、ガソリンに混ぜて使われていますが、ミネソタ大グループは「燃やして使うより、水素に転換して燃料電池に使う方が経済的」と見ている。

バイオマス(生物資源燃料)は、空気中の二酸化炭素を取り込み光合成で植物となったものを燃料とすることで、燃焼させても取り込んだ二酸化炭素を排出するだけですので、二酸化炭素増加にはなりません。それをエタノールに転換させガソリンに混ぜて燃焼させることで、オクタン価が上がり窒素酸化物が減少すると言われて来ましたが、今回の研究は更に水素製造によって、より効果的エネルギー変換が可能になる様ですので注目したいと思います。

エタノール燃料について、インターネットに調べますと次の様に書かれていました。残念ながら、日本ではハイオクガソリンに混ぜられているか否か判然としていません。

アメリカでは現在、全国で販売されているガソリンの12%にエタノールが加えられている。環境と健康への害を減らしエンジンのパフォーマンスを向上するためにエタノールが加えられたガソリンは量にして年間150億ガロン(約567億リットル)使われている。ブラジルでは、年間40億ガロン(約151億リットル)のエタノールを国内で生産し、ブラジルで給油されるガソリンには全て少なくとも20数%のエタノールが加えられている。他にも南アフリカやその他の国でエタノール燃料は使われている。

その場合、エタノール燃料はエネルギーを効率的に利用しているかが問題となります。即ち、エタノール燃料が発生するエネルギー量より、原料の作物を栽培したりエタノールを蒸留したりするために消費するエネルギー量の方が多いのではないかという懸念です。米国農務省は「トウモロコシを栽培しエタノールを蒸留するために使われたエネルギー量よりエタノール燃料の方が34%大きなエネルギー量を発揮できる」と結論づけていますし、又、アメリカの或る研究所が行った調査では「最良の農業技術と燃料製造技術を使えば、エタノール燃料は原料のトウモロコシを栽培し燃料を生産するために消費するエネルギー量の2倍以上のエネルギーを生み出すことができる」と述べています。

エタノール燃料がガソリンよりずっと害が少ない燃料であり、有毒排ガスの排出を減らし、そして植物を原料とする再生可能なエネルギー源であり、化石燃料のように精製時や燃料時に地球温暖化ガスを一方的に増加させないことがなにより大切です。エタノールはバイオディーゼル燃料を作るうえでも大切な役割があり、エタノールはメタノールの様に有毒ではないし、なにより簡単な器具を使って自分でも蒸留できることが魅力的です。


しかしながら、エタノールの原料となるバイオマス(トウモロコシ、サトウキビ)は少なく、日本の最大バイオマスである米の稲藁は強い繊維質を生かして他目的に相当使われていますので、この技術適用は難しいかも知れません。
又、エタノールはエチルアルコールそのものであり酒の原料でもありますので、酒税法からの大きな制約も考え、燃料アルコールとしてメタノール並の規制緩和を準備して置く必要がありそうです。

水曜日, 10月 04, 2006

Le Petit Prince-星の王子様

J'ai vecu seul, sans personne avec qui parler veritablement, jusqu'a une panne dans le desert du Sahara, il y a six ans. Quelque chose s'etait casse dans mon moteur. Et comme je n'avais avec moi ni mecaniciens, ni passagers, je me preparais a essayer de reussir, tout seul, une reparation difficile. C'etait pour moi une question de vie ou de mort. J'avais a peine de l'eau a boir pour huit jours.

サハラ砂漠での飛行機不時着事故に遭遇するまで、真に語り合える人もなく6年もの間、私は孤独に生きて来ました。ある時エンジンに何か故障が起こり、整備工も通行人も無いので、たった一人で難しい修理を行おうと準備を始めようとしていました。持っている水も8日分あるか否かでしたので将に生死の問題だったのです。

王子は小さな星でバラの花と暮らしていたのですが、我が儘な態度にいたたまれず逃げ出して、種々の星を渡り歩き、地球に着きサハラ砂漠で作者(飛行士)に遭遇したのです。飛行士の他、其処に住むキツネとか毒蛇とか交流もあり、特に狐からは

Voici mon secret. Il est tres simple: on ne voit bien avec le coeur. L'essentiel est invisible pour les yeux.

「私の秘密は此れ。“心でなくては良く見えない。肝心なことは目には見えない。”と言うとても簡単なこと。」

と言われ、我が儘な様に見える本当は自分を好いてくれるバラの花を守り暮らすことが大切だと悟るのです。
星の王子は心の眼(Il voit bien avec le coeur)を開いて、飛行士が8日で飲料水(l'eau a boir pour huit jours)が無くなってしまうのを防ぐ為、飛行士の為に水井戸を発見してその命を救います。その上、自分は故郷の星に帰るには体の重さが邪魔となるので、砂漠に住む毒蛇に噛ませて魂だけとなり帰って行ったのです。

Ca fait six ans deja..Si vous voyagez un jour en Afrique, dans le desert, et, s'il vous arrive de passer par cet endroit ou je tombais dans une panne, je vous en supplie, ne vous pressez pas, attendez un peu. Si alors un enfant vient a vous, s'il rit, s'il a des cheveux d'or, s'il ne repond quand on l'interroge, vous devinerez bien qu'il est. Alors soyez gentils! Ne me laissez pas tellement triste: ecrivez-moi qu'il est revenue..

もう既に6年が経った。もしアフリカに旅行し、私が不時着した辺りに着いたら、そこで少しの間じっとお待ち下さい。金髪の少年が微笑しながら現れ、聞いても何も答えなかったら彼なのです。優しくしてあげて下さい、そして彼が帰って来たと便りを私に出して欲しいのです・・


Petit Prince
この朗読CDについてはこちらをご覧下さい。単なる朗読で無く、配役毎の声優が音楽効果と共に演ずる演劇そのものです!

月曜日, 10月 02, 2006

ルネサンスと宗教改革-西村貞二

西村貞二氏が逝去されてからどの位経過しているのかは分かりませんが、敬虔なクリスチャンであり西洋史学者でありました。第2次世界大戦後、東大総長は南原、矢内原とクリスチャンが2代続き、彼等に私淑して東大教養学部の助教授でしたが、彼等の退任から暫くして東北大に転出し、其処で教授、名誉教授となりました。

ルネサンスと宗教改革-講談社学術文庫(西村貞二 著)

嘗て燦然たるルネサンス文化を生み出した活力は何処へ行ってしまったのであろう。現代社会において人間は組織や管理で手かせ足かせをはめられている。画一主義が横行する中で個性の発揮は難しい。
ヒューマニズムは単なる学識でなく、人間が生きる為の精神的土壌だった。しかし、万事に於いて実利主義が幅を利かす当節、古典教養が人間形成の具だ等と言うのはお笑い草だろう。古典知識は閑人の閑仕事とみなされ、大学か研究室で余喘を保っているに過ぎない。宗教改革はどういう結末をつげたか。ルターは形骸化したローマ教会の制度儀式に抗議したが、こうした抗議の姿勢は長くは維持出来なかった。ルター派が宗教改革を成功させる為には、否が応でも世俗権力と手を組まねばならなかった。その為、次第に俗権に対する抵抗力を弱め、現実政治に無関心になるか卑屈な隷属に陥り、単なる個人的信仰に逃避してしまった。
昨今、「近代の終焉」をしきりに耳にする。だからこそ、もう一度初心に立ち帰ることが有意義なのではなかろうか。


この書籍は元来1968年文藝春秋に発表されたものの復刊なのですが、1993年復刊に際しての「あとがき」として上記に様に述べているのです。西村貞二氏は歴史から学んだ事柄を現代に反映させ、政治社会体制にも警鐘を鳴らす人でもありました。

ギリシャの歴史と政治について、「アテネが王政にはじまり、貴族政治・金権政治・僭主政治・民主政治をへて衆愚政治に堕落する経路は、まるで政治のひな型を見るようでありませんか」と記し、民主主義が最善でないことはもとより、その脆弱性・衆愚性・危険性を暗示していました。人々は富を求めて競争するのが当然とされ、結果として自己の利益を優先する「個人主義」、他者を蹴落とす術に長けた者のみを成功者とする「弱肉強食」の社会が構築されることへの警鐘でしたが、残念ながら省みられること無く、尚一層その傾向が加速してしまっている様です。

此処数年改革と言う標題が吹き荒れましたが、問題はその後道義ある初心をどの様に展開するのかに掛かっているのだと思います。

日曜日, 10月 01, 2006

GTL−クリーンな代替石油

天然ガスから生産されるGTL (Gas to Liquids)は無色透明で、汚染物質の多い原油に較べて硫黄も不純物金属を含まず、大気汚染対策には格好の合成石油だ。
原油価格高騰を背景に、今後GTL製造プラント建設が加速するものと思われる。

天然ガスを原料に灯軽油などを生産する技術であるGTL (Gas to Liquids)は、不純物を含まない製品製造、天然ガスの利用分野拡大の面で石油メジャーが注力している分野でもある。
日揮(JGC)、千代田化工建設(CCEC)等が、シェル/カタールの大型GTLプラントでエンジニアリング契約、又、重工メーカもハード機器の供給契約を受注しており、日本勢もこの分野では重要な役割を果たしつつある。

昨年のニュース記事では次の様に紹介していた。

カタールのラスラファン市でGTLプラントの建設が進んでいる。これまでに200億ドル程がつぎ込まれ、嘗て無い大規模プラント群が建設されつつある。投資企業は、石油メジャーのシェル、エクソンモービル、シェブロンテキサコ等が名を連ね、中でもエクソンモービルはこのGTL技術に70億ドルを投じている。
2011年迄にカタールのプラント群は30万バレル/日の液化燃料を生産する予定だ。現時点で最大規模のGTLプラントは、マレーシアでのシェル工場内にあるが、生産量は1万4700バレル/日にとどまっている。
GTL燃料は1920年代にドイツで開発された「石炭液化」の製造法(Fischer-Tropsch法)を元にしている。南アはFT法によるSasolプラントで石炭の間接液化でガソリンを製造している唯一の国でもある。
カタール液化ガス社では、「日本、カナダ、韓国、ヨーロッパ、米国からも関心が寄せられている」としている。米国は京都議定書署名を拒んだものの、各州では排気量抑制基準を設け、精製業者がクリーンなディーゼル油を供給するよう後押ししている。硫黄を含有するディーゼル油では、エンジンの硫黄酸化物・浮遊粉塵排出等による心臓や肺の疾患で、米国では年間1万人もの人が死亡していると言う事情もある様だ。
しかし、GTL燃料の需要はそれほど伸びないと指摘する声もある。「燃料への混合剤として重要な役割を担うだろうが、原油に対抗するというのは誇張しすぎだ。ある程度は原油の使用量も減るだろうが、現状を大きく変えることはないだろう」と言うのだ。

シェルでは既にGTL燃料をタイ、オランダ、ギリシャ、ドイツで販売中、従来のディーゼル燃料よりも若干高価だ。
南アフリカとアメリカ企業が共同設立し、カタール第1号となるGTLプラントを49%保有するサソール・シェブロン社では、2006年GTLディーゼル燃料で市場に打って出る予定だ。
カタールでは2011年迄に3つの事業を立ち上げ、天然ガスを30万バレル/日以上の合成油が製造出来る様にプロジェクト推進中であるが、この生産量では現在の石油ベースのディーゼル油市場——1300万バレル/日——を切り崩すことにはならないが、将来の展望はいくらか開けるだろう。

GTL燃料は安価な天然ガスを原料にして大量生産されれば、採算面でも問題はないと言う。増して、原油価格が1バレル50ドルを越える現状では、大きな利益を生産者にもたらす。
エクソンモービルは2011年までに15万5000バレル/日の生産を目指しているとされ、「カタールに巨費を投じて来たし、今後もさらに投資していくつもりで、エクソンの投資先200ヵ国の内、カタールは今後10年内にはトップ投資国の1つになる」としている。
又、一方の石油メジャーの雄シェルでも、原油が20ドルに下落してもまだ利益が出ると試算している様だ。