土曜日, 10月 07, 2006

家庭用燃料電池-分散電源ビジネスとなるか?

エネルギー取得時に於けるCO2削減の切り札として、燃料電池が永らく注目を浴びて来ました。燃焼を伴わない、水素と酸素ガスから水にすると言う化学変化によってエネルギーを得る、中学校理科の実験「水の電気分解」を逆にした理屈ということで、発電効率が高いこと、排出されるのは水だけであること等、環境問題とエネルギー問題の同時解決が目論まれていたのです。

   種類         作動温度     発電効率    用途
リン酸型(PAFC)     約200℃     45%以下    小規模コージェネ発電、バス・トラック
固体高分子型(PEFC)   100℃以下  40%以下    分散電源、自動車、パソコン
溶融炭酸塩型(MCFC) 約650℃     50%以下    大規模コージェネ発電
固体電解質型(SOFC) 約1000℃     50%以上    中・大規模コージェネ発電

これで水素製造が太陽、風力、水力などの自然エネルギーによる水の電気分解で出来れば環境問題は解決出来るのですが、エネルギー出力総量が小さくそうは問屋が卸しません。 現在は水素を得る為には炭素を含む化石燃料を原料としますので、改質器の中で二酸化炭素、猛毒の一酸化炭素が発生しますので、除去しなければなりません。
特に12%も入っています一酸化炭素は、二酸化炭素変成プロセス過程を経て、排気中に10PPM以下となる様に設定されています。従って、排ガス中には相当量の二酸化炭素(CO2)が含まれていますので、CO2発生率は従来発電方式と殆ど同等となってしまいます。
化石燃料を使う限り、その宿命は変わりません! 広告の一方的な「うたい文句」に惑われないことがユーザとしても肝要です。

兎に角、新型大型火力発電所の最新型複合サイクル発電効率が最高60%ですが、固体電解質型(SOFC)とガスタービンを組み合わせることで70%効率が達成出来るとされ、米国エネルギー省(DOE)が技術開発に邁進しています。

中でも、自動車への適用開発過程から特に固体高分子型燃料電池(PEFC)の技術が進み小型化していますので、波及して家庭用分散電源、パソコン・携帯の電源として期待されていました。但し、上記の目標効率は達成出来ず、熱効率30%程度ですので、分散電源として発電単価が買電単価より高くなってしまう懸念はあります。
もっと問題なのは機器コストの高さで、単位kW当たりの価格が通常火力では10万円程度なのですが、燃料電池方式では10倍の100万円になってしまうので、現在開発の主目的は価格低減にあります。通常自動車の出力100kWとすると、エンジンだけで1000万円となりますので、ガソリンエンジン自動車にとても太刀打ち出来ないのです。

しかし昨年、将来の価格低減を見越して、東京ガスが家庭用燃料電池の発売を宣言しました。
容量は僅か1kWですので家庭需要の半分を賄う程度に過ぎませんが、2007年の電力完全自由化に向けて、ガス会社が電力会社に先駆けて分散電源ビジネス確保に先手を打ったと言えるのでは無いかと思います。
しかし「急いてはことを仕損じる」、消費者ユーザは当面様子見をするのが賢明だと思います。電力会社も魅力ある提案をして来る筈です。

インターネットニュースでは次の様に報じられています。
東京ガスは、松下電器産業、荏原製作所と共同開発を進めてきた家庭用燃料電池を2005年2月から一般に貸し出す、と発表した。
東ガスは、家庭向けに商品化されるのは世界初、としている。他の都市ガスや石油会社も様々な方式を開発中で今後、商品化が続きそうだ。
燃料電池は、水素を酸素と化合させると、電気・熱と水が発生することを原理にしている。東ガスの装置は熱電併給(コージェネレーション)方式で、都市ガスから取り出した水素を使って発電。排熱も利用してお湯をわかし、給湯や暖房に使う。発電・熱回収の装置(高さ約1m、幅80cm)と貯湯槽(高さ約2m、幅約80cm)の二つからなり、出力は1kWで、4人家族の標準世帯が使う電力の60%をまかなう。
2006年3月までに200台を貸し出し、期間は10年間で使用料は100万円。利用者にはガス料金を3年間3%割り引く。通常のガス・電気利用に比べ、標準世帯で光熱費を年間約6万円節約でき、エネルギー消費量も26%減るという。
2009年度には年間1万台の普及を見込んでいる。 東京ガスは「今は採算性を考えず、先行投資のつもりで普及させたい」と話す。
今後、1万3千時間(約3年分)程度の電池寿命を4万時間に延ばすことや、販売価格目標(50万円)に見合う製造コスト(現行数百万円)の引き下げが課題だ。
大阪、東邦ガスは東ガスの後を追い、同様の製品を2005年度中に投入する計画。大ガスは京セラと共同で、発電効率の高い別タイプも開発中で、2008年度の商品化をめざしている。
石油業界では新日本石油と出光興産がそれぞれ2006年度の商品化を目標に、灯油から水素を取り出す方式の燃料電池を開発中。
次世代家庭エネルギーの主役の座をめぐる開発競争の中から、さまざまな商品が登場しそうだ。

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