土曜日, 10月 07, 2006

工業的大型酪農からのBioFuel

一見何の関係も無さそうな両者が結びつくのは、よく落語で使われる「風が吹けば桶屋が儲かる」と言った三題噺ではありません。そうした研究があるらしく、現在米国イリノイ大学で行われている様子です。


この写真は酪農関係の雑誌でも無く、環境関連のものの表紙でもありません。最近郵送されて来ました、歴とした米国機械学会の副学会誌「Power & Energy」の表紙です。

「隠れた資源:新技術は豚一頭一生分の糞尿廃棄物を0.5バレル(80リットル)の石油に変換します」として、記事には下記の様に記載されています。

米国での工業農業は巨大な規模で実施されています。毎年1億頭を越える豚が屠殺されて食卓に供されていますが、これは各家庭1頭分に相当します。しかし、豚は同時に相当量の糞尿を生み出しまして、環境汚染の一因ともなって来ました。豚舎の排水、汚泥だけで無く、悪臭汚染が大きな問題となって来たのです。豚酪農の環境に対するこれらの深刻な影響は、政府各局、公共機関、酪農業界の関心事となり、解決策を模索中です。糞尿廃棄物は嘗て価値のある肥料として使われたのですが、大規模酪農の進展によって業界の大きな負担となってしまったのです。
イリノイ大学で行われている研究は、逆手を取って、これら大量の糞尿を熱化学変換プロセスでエネルギー源としようとの試みで、再生可能な代替燃料を生産しようとするものです。熱化学変換プロセスは1970年代、主として石炭、泥炭、廃木材を無酸素状態の雰囲気で石油資源にしようとの研究テーマで、技術的には納得出来る結果を得ていたのですが、経済効率が低く、小規模の実験プラントで留まって頓挫してしまいました。今回の研究は、原料が石炭等の燃料では無く、酪農家にとって重荷となっていた廃棄物処理ですので、経済効率が向上し、環境影響の面からも成果が期待されています。実験室的には廃棄物固体の63%がベンジン主体の代替石油に変換され、発熱量は30500kJ/kgで高炉用燃料とほぼ同じという結果が出ています。


日本でも酪農農家から出る廃棄物は、肥料として再利用されるだけでは無く、発酵プロセスを使ってメタンガス生産が試みられていますが、工業規模とはなっていないのが現状です。
それにガスより液体の方が貯蔵・輸送が断然有利なので、出来れば代替石油を生産する方がベターに思えます。WTO農業交渉の進展次第では、日本でも工業農業の導入が真剣に検討されなければなりませんが、米国のこの様な研究は大きな助けになりそうです。

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