日曜日, 10月 08, 2006

低硫黄軽油-ディーゼル復権?

2003年10月から、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県の条例で定める粒子状物質(PM)の排出基準を満たさないディーゼル車の走行が禁止されて以来、真っ黒な排煙が少しは軽減された様な気がします。
首都圏の大気汚染は深刻な状況にあり、浮遊粉塵(PM)は気管支喘息などの呼吸器系の疾患や肺がんなどの健康への悪影響や、花粉症とも関係があると疑われていますのですから、もっと早く実施すべきでした。それに加えて、硫黄酸化物による大気汚染軽減の為、東京都は石油連盟に対し、低硫黄軽油の早期供給を要請して来ました。現行の軽油のJIS規格では、軽油中に含まれる硫黄分は500ppm(ppm:100万分の1)以下ですが、低硫黄軽油は50ppm以下へと硫黄分を低減させた軽油です。

ディーゼルエンジンは貨物輸送には最適のエンジンとされて来ました。ガソリンエンジンに較べ燃料効率が30%良いこと、軽油がガソリンに較べて価格が30%安いこと等が大きな理由でした。トータルで考えますと半分の燃料経費で済むのです。しかし、ディーゼルエンジンでは燃料を自然発火させる為、圧縮比を高くしなければならず(電気火花機関ガソリンエンジンの3倍)、それが振動大、浮遊粉塵(PM)、窒素酸化物(NOx)排出増の要因となっています。それに加えて、坂道での動力増強の為に燃料大量噴射しますので、未燃分による黒煙・臭気が酷く、すっかり悪者扱いとなりました。

その為、日本では乗用車でのディーゼル搭載は無くなってしまいましたが、欧米では未だに燃料経済性の面から乗用車でも一定の位置を占めています。ディーゼルエンジンの燃料効率が30%良いと言うことは、二酸化炭素排出が30%少ないと言うことですから、その面から復権を狙っている様です。

米国機械学会誌2005年1月号に「ディーゼル代替:The Diesel Alternative-Cleaner, quieter versions may be coming」と言う記事がありましたので、要約紹介致します。

貨物輸送の生き血であるディーゼルの技術改善が実施中で、燃料直接噴射と電子制御による二段燃焼改善により振動・粉塵・窒素酸化物問題を改良させていますし、日本と同様に粒子状物質(PM)減少装置も2007年米国でのディーゼル全車モデルから装着されることになりました。硫黄酸化物排出改善の為、米国環境保全局(EPA)では2006年から日本より厳しい15ppm低硫黄軽油を義務づけています。窒素酸化物(NOx)排出に対しては、選択触媒還元装置(SCR: Selective catalytic reduction:尿素噴射による窒素酸化物分解)によって大気汚染規制値適合を目指す方向です。問題は製造コストで、現状では約1500ドル余計に掛かることになりますので、何とか半減以下とし、2008年モデルでは500~600ドル追加程度にしたいとのことです。


改良されたディーゼルは温暖化防止の観点から、トラックだけでなく乗用車用エンジンとして復権なるでしょうか? 現状エコカーとして知られるハイブリッド車もガソリンエンジンとの組み合わせよりもディーゼルとの組み合わせの方が二酸化炭素削減には有利になるのですが・・

燃料電池車も原料を化石燃料に頼る現状では、二酸化炭素排出率はそれ程改善される訳ではありません。


このエンジンの発明者はルドルフ・ディーゼル、普く全世界に使って欲しいとの彼の希望はナチスドイツによって阻害され、殺害されたと言われています。

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