火曜日, 2月 27, 2007

風力発電 と国立公園−開発か自然保護か

開発か自然保護かは何時も論議される問題ですが、環境保全を得つつ発電すると言われる風力発電もその埒外では無い様です。
極端な開発も困りますが、極端な自然保護にも付いて行けないものがあります。
Yes or Noの結論を簡単に着けるだけで無く、何とか双方で妥協の出来る次善の方法を探って行く必要がありそうです。

朝日新聞の「天声人語」に次の様に書かれています。

国立・国定公園でも風力発電施設を設けやすくする様な基準を作って欲しいと、推進自治団体や発電事業者の団体が政府に要望した。
環境省の検討会では、安定して強い風が得られると要望のあった山の尾根への建設を、景観が損なうとして厳しく規制する方針と言う。
光や水や風の活用は大事だし、更に広げて行きたい。寧ろ、前向きに考えて、よくよく悩んだ上で折り合いをつけて貰いたい。風は、消えることも減ることも無いのだから。


従来は風の強い地域で、僻地や離島での発電確保を目的とした風力発電も東京湾地区にも設置される様になりました。
化石燃料も核燃料も使いませんので、CO2削減に最適の様ですが、発電容量が極めて小さく設置コストが高価である為、CO2削減の切り札と考えるには無理があります。
政策的な新エネルギー奨励助成が外されますと、従来の火力発電に較べて発電コストが極めて高く、それらと競合出来なくなり経営的には成り立ちません。
種々の評価と論議が必要でしょうが、送電コストが高くなってしまう僻地や離島での発電が、風力発電の生かされる道だと考えています。

経済産業省資源エネルギー庁HPには次の様に紹介されています。

風力エネルギーは、風向・風速の変動により安定したエネルギー供給の難しさはあるものの、潜在的には資源が広範に賦存し、無尽蔵な純国産のエネルギーである。
経済産業省では、1976〜2000年までサンシャイン計画において風力発電システムの技術開発、1981〜1986年度まで三宅島で100kW級風力発電プラントの研究、1990〜1998年度まで大型発電システムの技術開発、1999年度から離島用風力発電システム等の技術開発を実施している。
我が国の風力発電の導入実績は、2001年度で260基超、出力約14万kWとなっている。これまで、そのほとんどは電力会社、地方公共団体、国等が試験研究用あるいはデモンストレーションとして設置したものであったが1992年の電力会社による余剰電力購入制度及び1993年の系統連系技術要件ガイドラインの整備により、近年、発電電力を電力会社に売ることが可能となったため、売電事業を目的として設置されたものも増加している。
 また、世界第1位のドイツにおける風力発電の導入実績は約610万kW、第2位のアメリカは約260万kWで、我が国に比して相当大きな導入量となっており、一層の導入拡大を目指した政策的支援が行われている。 
 我が国における風力発電の導入における最大の課題は、普及が進んでいる欧米諸国に比べ大気の乱れが大きく、設備利用率等に起因する高い発電コストである。1995年度から「風力発電フィールドテスト事業」を創設し、風力発電の有望地域において風況精査を実施するとともに風力発電設備を設置・運転を行い、データ収集等の調査研究事業を実施している。
又、1997年度から地方公共団体に対する支援制度として「地域新エネルギー導入促進事業」及び民間事業者に対する支援制度として「新エネルギー事業者支援対策事業」により導入経費に対する補助を行っている。

レイノルズ数-工学無次元数の代表格

工学の世界では、実際の現象を実験室規模でシミュレーションして再現しながら解析し、改良に適用することが重要であるとされている。

それぞれの解析目的で種々提案されていて、代表例として次の様な無次元数がある。

レイノルズ数(流体における慣性と粘性の比率。流体解析に必須)
マッハ数(物体の速度と音速の比率。高速流体解析に必須)
プラントル数(熱輸送と運動量輸送の比率。熱流体解析に必須)
ヌセルト数(熱伝達と熱伝導の比率。伝熱解析に必須)
ビオ数(熱伝達と固体側熱伝導の比率。伝熱解析に必須)
レーリー数(温度勾配を無次元化した量。熱対流解析に必須)
グラスホフ数(自然対流を表す無次元数。熱対流解析に必須)
リチャードソン数(密度が層状変化する流れ。気象力学に必須)

逆に複数の現象比較を行う際には、スケールの違いなどの影響を除くために、計測結果などを無次元化して、無次元数で比較を行うことが妥当と考えられる。


流体力学の分野で多く用いられるレイノルズ(Re)数は、代表長さ[長さの次元]、代表速度[速さの次元]、動粘性係数[粘性/密度の次元]の値を用いて求められ、流れ場の状態を表す無次元数となり、応用性が広い無次元数の代表格とされている。

MoodyFriction
上記のグラフは円管内流れ場におけるRe数と流体摩擦損失無次元数との関係を表したもので、上下水の水道管、ガス管等の大きさ設定の妥当性に用いられる。
即ち、水、各種溶液等の液琉体、空気、各種ガス等のガス流体を流送する場合に、適切な口径と摩擦抵抗に見合うポンプ・圧縮機の所要動力が設定されるのである。

レイノルズ(Re)数は、交通機関媒体を設計するにも有用な無次元数で、設計には欠かせないものとなっている。
例えば、航空機・自動車を設計する際に、実際の媒体と模型について、このレイノルズ数が同じであれば、媒体周りの空気の流れは相似となりサイズは異なっても本質的には同じ現象と考えることが出来るのである。
乗用車であれば大きさは数メートルなので、実際媒体で風洞試験を行い、流体抵抗を実測することが出来そうに思われる。
しかしながら、航空機となると数十から百mを超える大きさになるので、小さな模型を用いてレイノルズ(Re)数が同一となる様に試験して、設計是非を検討することが必須になる。結果は所要エンジン動力大きさに直結するので、極めて重要な試験解析となるのである。
近年コンピュータによるCFD解析で解析出来そうに思われるのだが、Re数が異なればその解析は用を為さないので、どうしてもRe数を同一にしたシミュレーション風洞試験を実施しなければならない。

小さな模型試験で、レイノルズ(Re)数を合わせるには、風洞の高圧化・極低温化など種々方法が考えられるが、いずれも詳細な工学検討と多大な設備投資が必要となる。
この実際動向については種々あるが、多大な設備投資が必要で、国家もしくは多国間プロジェクトで推進されている例が多い。

この件については、いずれ又、次の機会を得て論じたいと思っています。