土曜日, 12月 22, 2007

ハイタン(Hythane)とナチュラルハイ(Naturalhy)

21世紀は化石燃料も枯渇を迎えて、水素エネルギー利用無しにはエネルギー供給(Energy Supply)が成り立たなくものとされています。
しかし、一挙に転化できるものでも無く、当面は埋蔵量豊富な天然ガス(Natural Gas)を燃料としつつ、段階的に天然ガスに水素を混ぜたハイタン(Hythane)、究極的には水素(Hydrogen)を用いることが妥当とされています。

ハイタン(Hythane)はアメリカにて使われる造語で、 Hydrogen+Methane=Hythaneとされ、米国のBrehon Energy PLC の商標登録用語とされています。
ヨーロッパではナチュラルハイ(Naturalhy)、即ちNatural Gas+Hydrogen=Naturalhyと呼ばれているのですが、アメリカ造語の方が使い易いと思われます。

ハイタン(Hythane)若しくはナチュラルハイ(Naturalhy)は、天然ガスに水素を15~20%混ぜたもので天然ガスに比べ、温室効果ガスや大気汚染物質を約50 %削減すると報告されています。


水素(Hydrogen)の時代は2050年以降と考えられていましたが、COP13のロードマップを考えますと、ハイタン(Hythane)利用が加速して、2020年には水素(Hydrogen)エネルギー時代が始まるものとみて準備を始めておく必要がありそうです。
水素エネルギー社会が実現すれば市内に水素パイプラインが敷設されて家庭や工場に水素が送られることが予想されますが、水素供給チェーン(Supply Chain)での主たるコスト要因は、製造では無く配送と貯蔵と考えられており、長期的な解決策は、水素パイプライン・ネットワーク(Hydrogen Pipeline Network)の構築にあるとされています。

水素ガス・パイプラインの実態漏洩調査から、パイプライン接続部やシール部は、天然ガス・パイプライン以上に頻繁にチェックする必要があることが確認されており、水素ガス・パイプラインは、一般に天然ガス・パイプラインよりも低圧で操業されているのが現状となっていて、エネルギー輸送量が低くなってしまうのが問題となっています。
従って、漏洩防止構造設計と防爆安全設計の向上を綿密に企画し、安全で効果的な高圧力でのハイタン輸送から水素ガス輸送実現が、今後喫緊の課題になるのだと思っています。

月曜日, 12月 17, 2007

高性能リチウムイオン電池

リチウムイオン電池は初期型メタハイ(MH)電池よりも、エネルギー密度が高く使用寿命も長いことから、ノートパソコンなどモバイル情報機器に多く使用されています。しかし、過充電は電池を急激に劣化させ、最悪の場合は破裂・発火すると言われ、実際にモバイル機器の電池が火災や爆発が起きて回収となった事例が多くありました。

東芝は12月11日、高温や低温など過酷な条件下でも発火や破裂の恐れが少ない新型の高性能リチウムイオン電池「SCiB(Super Charge ion Battery)」開発成功と事業化計画を発表しました。
「高い安全性、長寿命、急速充電性能、高出力、低温性能」との特徴が挙げられています。

負極材に従来のコバルト酸リチウム(LiCoO2)に替えてチタン酸リチウム(LiTiO2)を採用、引火点の高い電解液や耐熱性セパレータを組み合わせ、内部短絡が起こっても熱暴走を起こしにくい。
バッテリを物理的につぶして短絡させても、セル温度は100℃未満で収まり、発煙も発火も生じない。
急速充電を3000回繰り返しても容量低下は10%未満、約5000回を超える繰り返し充放電が可能。5分間で電池容量の90%以上の充電が可能。
電気二重層キャパシタ並みの高い入出力性能(パワー密度)、マイナス30度の低温環境でも十分な性能を維持するとされている。
2008年3月から量産を開始しつつ、非常用電源・風力発電平準化電源への産業用途、電動アシスト自転車・ハイブリッド車など電動車両への適用を模索し、2015年度には売上高1000億円規模を目指すらしい。


発表された「SCiB」性能の特性上、モバイル用リチウムイオン電池の電圧やエネルギー密度が及ばないことから、現状では携帯電話・パソコン機器向けとは位置づけられていないのが残念です。
しかしコバルトはレアメタル(稀少金属)ですから、チタン適用電池の方がコスト的にも安価に出来る可能性も秘めています。

燃料電池(Fuel Cell)と共に期待したい技術ですし、小型化は寧ろ高性能リチウムイオン電池の方が向いているのではと思っています。

月曜日, 12月 03, 2007

C-X輸送機用エンジン選定

私が初めて飛行体験したのは、航空自衛隊木更津基地でのC-46輸送機で、1963年のことでした。座席後部には落下傘降下用の開口部があって、歩いて行けば落ちるのだと少し怖かった思い出も残っています。
C46

それから45年経ちましたが、驚くほど防衛用輸送機は進歩しようとしています。それにつれて調達費用も莫大となり、防衛利権が暗躍する事態となり、賄賂・収賄が取り沙汰されているのは許されることではありませんが、エンジン選定結果そのものは極めて妥当だと思っています。

C-X (Cargo aircraft-X) は、防衛省・航空自衛隊における「次期輸送機」の一般名称で、第一次C-XはC-46の後継として1960年代に計画され、防衛庁技術研究本部と川崎重工業が開発したターボファンエンジン双発の中型輸送機でC-1として採用された。
第二次C-XはC-1の後継として2000年に計画され、防衛省技術研究本部と川崎重工業にて開発が進められている、ターボファンエンジン双発の大型戦術輸送機である。

C-1と比較し積載量は3.75倍・飛行速度は1.2倍、航続距離はC-1がペイロード8t搭載時に約810kmに対し、C-Xは12t搭載時に約8,900kmとなっている。
C-X技術仕様
乗員: 3名(パイロット2名・ロードマスター1名)
寸法: 43.9m L x 44.4mW x 14.2mH
最大離陸重量: 141,100kg
最大積載量: 37,600kg
エンジン出力: 27,900kg(推定)×2
巡航速度: Mach 0.8 (高度12,200mのとき)
巡航高度: 12,200m
航続距離: 0t/10,000km 12t/8,900km 37t/5,600km

装備するエンジンは、ロールス・ロイス(RR)、ゼネラル・エレクトリック(GE)、プラット&ホイットニー(P&W)の3社からの提案を検討した結果、2003年8月にGEのCF6-80C2型エンジンを採用した。CF6-80C2のカタログ価格は1基1,000万ドルである。
選定に際しては、導入されているB747-400(政府専用機)やE-767、導入予定のKC-767が同一エンジンを採用しており、整備面で都合が良いことから決定されたと思われる。海外でも広く普及している為、渡航先での整備拠点もあり、又日本国内のエアラインもボーイング社製の機体と共に、同系統エンジンを600基以上採用しており、信頼性の高さと国内での運用経験も選定の根拠とされている。


この大型ファンエンジンを供給出来るのは、ゼネラル・エレクトリック(General Electric: GE)社、ユナイテド・テクノロジー(United Technologies)傘下のプラット&ホイットニー(Pratt & Whitney: P&W)社、ロールス・ロイス(Rolls Royce: RR)社と、世界に3社しかなく、選定候補は次の様だったと思われます。

P&W候補エンジン: PW-4062 (推力 28,100kg)
GE候補エンジン: CF6-80-C2(推力 27,900kg)
RR候補エンジン: RB-211-524G(推力 27,200kg)

いずれのファンジェットも優れたエンジンですが、私が選定責任を負わされても、燃料消費(Fuel Economy)・運用実績(Flight Experience)・整備体制(Logistics Support)・環境適合(Low Emission)などの観点から、多分GE社のCF6エンジンを選んだと思います。

民間大型旅客機B747開発ではP&W社JT9DとRR社RB211が搭載エンジンを競ったのですが、JT9Dに軍配が上がり、RR社は開発費が嵩んだことで倒産し英国策会社となりました。
遅れを取ったGE社は軍用輸送機C5A‐Galaxy(ペイロード118t:大型戦車輸送可能)搭載のTF39を受注することで、それを民間用に設計変更しCF6シリーズを展開、燃料消費率の優秀さから民間大型旅客機への搭載が増加してP&W社JT9DとRR社RB211を凌駕する事態となりました。
そこでP&W社はJT9Dエンジンを全面設計変更してPW4000シリーズを展開して、3社供給体制を維持して来たのです。

今回のC-X輸送機用エンジン選定問題、山田洋行が防衛利権を掛けて暗躍し賄賂・収賄が取りざたされていますが、選定結果そのものは極めて妥当だと思っています。

土曜日, 12月 01, 2007

M82星雲-すばる望遠鏡の宇宙

M82

おおぐま座にあり、1200万光年の彼方に位置する銀河M82星雲の可視画像。
大きく左右に伸びた白い星雲が星の集団で、上下に広がる赤い筋は中心部での星形成が引き起こす高温の水素ガス風だ。
この銀河の中心部では太陽の10倍以上の巨星が一時に何万個と生まれるのだから、実に激しい爆発的星形成銀河(Starburst Galaxy)だ。


此処までスケールが大きくなって来ますと、人生への屈託も無く、純粋にロマンと知識探究の楽しみのみで痛快の限りです。
人類は太古の昔から、夜空の天体を観測し、星座を作っては神話と融合させる楽しみを育んで来ました。近世、ガリレオの屈折式望遠鏡、ニュートンの反射式望遠鏡の発明からは詳細な天文学も発達して、ロマンがより壮大なものになりました。

すばる望遠鏡の宇宙-岩波新書(著者 海部宣男 写真 宮下暁彦)

著者は、1999年400億円を掛けてハワイ島マウナケア山頂に設置した日本が誇る「8.2mすばる望遠鏡」のプロジェクト・リーダとして建設・運用を纏め上げた経過・結果を記述したもので、直接責任者としての思いが強く感じられる著作となっています。

機器製作、現地建設、運用後の天体写真も、多数のカラー写真で説明されるので、読んでも眺めていても楽しいものがありました。
「すばる望遠鏡」性能の素晴らしさから、数々の成果を得て、ビッグバンから宇宙が膨張し続けている様子、アインシュタイン相対性理論の重力による光の歪みも検証出来たことが平易に説明されています。
著者は、技術論から科学論まで説得力があり、プロジェクト・リーダとしても、天体研究者として優秀なのだと実感させるものがありました。

アルマは、日本の国立天文台、EUのヨーロッパ南天文台(ESO)、米国の国立電波天文台(NRAO)の3者が協力して建設、運営する大電波望遠鏡。
南米チリ標高5000mのアタカマ高原に80基の高精度パラボラを10km以上の範囲に配置するプロジェクトは進行中で、精密なアンテナ搬入も始まっている。


「すばる望遠鏡」以降の新しい大型精密望遠鏡計画の紹介もあって、天体への知識欲・探究心は留まることが無い様です。