近頃年金改革で問題となって少子高齢化を論じた軽い読み物だと思っていたのです。論点が重複したり、主張の展開方法が雑だと思われる所も見受けられますが、新書版にしては割合読み応えのあるものでした。特にリサーチ・リテラシー(Research Literacy)を発揮して、公表少子化データの誤りを指摘している所は迫力がありました。
結論的には、「少子化対策としての子育て支援や育児支援は正当化されず、年金制度設計は低出生率を前提とした上で,少子化がもたらす負担は,特定のライフスタイルや特定の世代に集中しない形で分配すべきだ」となるですが、従来公表されている「男女共同参画的な少子化対策が出生率は回復する」が夢想に過ぎないことを看破していること等は非常に興味がそそられることになりました。
子供が減って何が悪いか-筑摩新書(赤川学 著)
世に溢れる世論調査や統計的データの中には胡散臭いものが相当含まれている。そのようなデータ類を批判的に解読するリサーチ・リテラシー(Research Literacy)が提唱されている。リサーチ・リテラシーとは国や報道機関が公表したことなら事実に違いないと信じる「素朴な人」の段階を超えて、データに対して疑いの目を向け、相対的に妥当な統計とそうでないものを区別できる「批判的な人」になることを目標としている実践教育である。
男女共同参画型夫婦が不遇だから少子化が進むなんていう馬鹿馬鹿しい雰囲気を醸し出しているのは、マスコミとか政府関係者とかの言説であって、いくらその層を支援しても晩婚・非婚の解消には繋がらないし、夫婦出生力の低下への歯止めとしても限定的な効果しか無い。
著者は社会学を専攻する大学助教授であり、少子化問題については素人であると告白していますが、その専門分野で使われるリサーチ・リテラシーを駆使して少子化問題についての公表データ・結論等が間違っていると指摘するのは小気味良いのです。その為か、アンチ・フェミニズムの保守派と詰られて一般公表するのも躊躇したらしいのですが、一石を投じる意義はあると出版に踏み切った経緯もあとがきに述べられています。
この手の本は往々にして予見を持って読まれることが多いのですが、この本は虚心坦懐に読むことが求められそうです。著者の言うリサーチ・リテラシーの立場からすれば、この本自体を批判的に読むことも許されるのでしょうし、又逆に、無批判に受け入れること無く読み進めば多くの論点において一読に値する内容を備えた本だと思われました。
水曜日, 9月 27, 2006
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