日曜日, 10月 01, 2006

GTL−クリーンな代替石油

天然ガスから生産されるGTL (Gas to Liquids)は無色透明で、汚染物質の多い原油に較べて硫黄も不純物金属を含まず、大気汚染対策には格好の合成石油だ。
原油価格高騰を背景に、今後GTL製造プラント建設が加速するものと思われる。

天然ガスを原料に灯軽油などを生産する技術であるGTL (Gas to Liquids)は、不純物を含まない製品製造、天然ガスの利用分野拡大の面で石油メジャーが注力している分野でもある。
日揮(JGC)、千代田化工建設(CCEC)等が、シェル/カタールの大型GTLプラントでエンジニアリング契約、又、重工メーカもハード機器の供給契約を受注しており、日本勢もこの分野では重要な役割を果たしつつある。

昨年のニュース記事では次の様に紹介していた。

カタールのラスラファン市でGTLプラントの建設が進んでいる。これまでに200億ドル程がつぎ込まれ、嘗て無い大規模プラント群が建設されつつある。投資企業は、石油メジャーのシェル、エクソンモービル、シェブロンテキサコ等が名を連ね、中でもエクソンモービルはこのGTL技術に70億ドルを投じている。
2011年迄にカタールのプラント群は30万バレル/日の液化燃料を生産する予定だ。現時点で最大規模のGTLプラントは、マレーシアでのシェル工場内にあるが、生産量は1万4700バレル/日にとどまっている。
GTL燃料は1920年代にドイツで開発された「石炭液化」の製造法(Fischer-Tropsch法)を元にしている。南アはFT法によるSasolプラントで石炭の間接液化でガソリンを製造している唯一の国でもある。
カタール液化ガス社では、「日本、カナダ、韓国、ヨーロッパ、米国からも関心が寄せられている」としている。米国は京都議定書署名を拒んだものの、各州では排気量抑制基準を設け、精製業者がクリーンなディーゼル油を供給するよう後押ししている。硫黄を含有するディーゼル油では、エンジンの硫黄酸化物・浮遊粉塵排出等による心臓や肺の疾患で、米国では年間1万人もの人が死亡していると言う事情もある様だ。
しかし、GTL燃料の需要はそれほど伸びないと指摘する声もある。「燃料への混合剤として重要な役割を担うだろうが、原油に対抗するというのは誇張しすぎだ。ある程度は原油の使用量も減るだろうが、現状を大きく変えることはないだろう」と言うのだ。

シェルでは既にGTL燃料をタイ、オランダ、ギリシャ、ドイツで販売中、従来のディーゼル燃料よりも若干高価だ。
南アフリカとアメリカ企業が共同設立し、カタール第1号となるGTLプラントを49%保有するサソール・シェブロン社では、2006年GTLディーゼル燃料で市場に打って出る予定だ。
カタールでは2011年迄に3つの事業を立ち上げ、天然ガスを30万バレル/日以上の合成油が製造出来る様にプロジェクト推進中であるが、この生産量では現在の石油ベースのディーゼル油市場——1300万バレル/日——を切り崩すことにはならないが、将来の展望はいくらか開けるだろう。

GTL燃料は安価な天然ガスを原料にして大量生産されれば、採算面でも問題はないと言う。増して、原油価格が1バレル50ドルを越える現状では、大きな利益を生産者にもたらす。
エクソンモービルは2011年までに15万5000バレル/日の生産を目指しているとされ、「カタールに巨費を投じて来たし、今後もさらに投資していくつもりで、エクソンの投資先200ヵ国の内、カタールは今後10年内にはトップ投資国の1つになる」としている。
又、一方の石油メジャーの雄シェルでも、原油が20ドルに下落してもまだ利益が出ると試算している様だ。

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