日曜日, 3月 25, 2012
政府は必ず嘘をつく-堤未果(角川新書)
著者の堤未果女史は現在では少なくなった左派のジャーナリストであり、希少価値があるかも知れません。分析には鋭いものがあるのですが、自己変革に向けての啓蒙活動という方策しか示されていないのは残念に思われます。
しかし、現在問題とされる記者クラブを通じて政官と癒着してしまったマスコミに対してメスを入れたことは読んでみる価値があると思われます。
原発を推進して来た自民党と原発事故を隠蔽する民主党の根っこは同じだった。官僚と企業の癒着が安全神話を撒き続け、マスコミも学者も支配下に置いていた原子力村の存在は、海外メディアにも大きく取り上げられている。
巨大な資金力を持つ経済界が政治と癒着する“コーポラティズム”が支配を進める程に、選挙も又消費活動の一環としてマーケティング戦略に組み込まれて行き、“資本独裁国家”と化して、国民の選択肢は限りなく一党独裁に近いのだ。
対話形式の論理展開が多いので、雑駁の感は否めないが、ナオミ・クライン(Naomi Klein)の「ショック・ドクトリン」の日本版と言えないこともありません。
豊かな国有資源を持つイラクが、フセイン転覆後に大資本の特売場と化したように、リビアの富も又、市場に並べられるのだろうか。ナオミ・クラインが指摘した“戦争と債権の民営化モデル”が、此処にも見え隠れしている。
TPPへの参加協議を迎える日本も例外で無く、東日本大震災被災地における外資への税制優遇が「特区構想」や、「グローバル化」を掲げるだけでその実態は説明されないままだ。5大紙の社説はこうしたワンフレーズを含む推進内容になっており、「漁協」「農協」が旧体制のシンボルとして成長を阻む敵の様に描かれている。
TPP全加盟国の中でアメリカだけが、自国内法と異なるルールが検討事項に挙がった際、議会の承認が得られないことを理由に拒否できるのだ。これはTPPが自由貿易ではなく、アメリカ政府が要求するルールに支配されるものであることを示している。
これらショック・ドクトリンへの対抗策は、FacebookもTwitterも“コーポラティズム”範疇にあるので、自己変革が必要だと結論づけるのには竜頭蛇尾と残念に思われて仕方がありません。
原発も放射能汚染も、TPPも金融危機も、医療も教育も第一次産業も、様々な立場からの声が上がるだろう。大切なのは一つの情報を鵜呑みにせず、多角的に集めて比較し、過去を紐解き、自分自身で結論を出すことだ。
マルクスが望んだ「99%のプロレタリアよ、団結せよ!」は、資本独裁主義へのアンチテーゼとして復権されるべきなのでしょう!
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