23年間に亘って、NHK「クローズアップ現代」のキャスターを務めた国谷裕子女史の半生の内省回顧録で、キャスターという仕事のあるべき姿を提示していて興味深いものがありました。
アメリカの大学を卒業、帰国子女で小学校の数年を除いて、海外の大学やインターナショナルで教育を受けたことでNHKからの依頼もあって国際報道を担当しますが、日本のことを知らず、日本語の「てにをは」がおかしく、辛酸を嘗めてしまいます。
NHK職員ではなく、契約社員であったこともあって、業務に縛られずに、降板と言う失敗を克服すべく自己研鑽を重ねます。
そしてノウハウを積み重ねる研鑽と臥薪嘗胆が功を奏して、遂に1993年、「クローズアップ現代」と言う、政治、経済、事件、災害、社会、文化、スポーツと幅広いテーマを扱う番組のキャスターに抜擢されたのです。
それから23年間、3800件に近くキャスターとして、個人が組織、社会に抗って生きるのは難しいと、企業不祥事が起きると法令順守、リスク管理を喚起したのですが、社会全体に「不寛容な空気」が浸透して行くのを感じて、公共放送の公平さに則り、企業のみならず政府にも直言を呈する様になります。
安倍政権が望んだ政府に従順なNHK会長が就任することで、政府に直言する傾向のある「ニュース9」キャスターの大越氏の降板に続き、やらせ番組を報道したとして「クローズアップ現代」のキャスター国谷裕子女史の契約解除と言う事態となりました。
「あとがき」には、「トランプ大統領がメディアは余計なフィルターとしてTwitterを使って情報発信をして「Post-Truth(脱真理)」の世界が広がりつつある。しかし、人々の生活に大きな影響を及ぼす立場にある人に対して、発言の真意と根拠を丁寧に確かめなくてはならない。ジャーナリズムがその姿勢を貫くことが、民主主義を脅かす「脱真理」の世界を覆すことに繋がると信じたい」と結ぶのです。
将に民主主義の危機と警告しているのが感じられる書籍でした!
日曜日, 2月 05, 2017
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