金曜日, 2月 10, 2012
中公新書 寺田寅彦-和魂洋才の物理学者
「天災は忘れた頃にやって来る」とは物理学者である寺田寅彦の警言として良く知られています。
東大教授として理化学研究所主任研究員として、ノーベル賞になるべき種々の科学業績を残しつつ、随筆家としても文筆家として類稀なる足跡を残しています。
彼は興味の視点が多岐に亘っていて、理学博士の学位論文が「尺八の音響学的研究」と一風変わった学位論文で、イギリスのノーベル物理学者レーリー卿の「音響理論」に触発されて研究されたものでした。
その論文選択には、熊本第五高等学校からの恩師であった夏目漱石の文学的影響に加えて、科学への係わり方、人生観への影響も少なからずあったのだと推断出来ます。
しかし其処で、著者は寺田寅彦には二人の師がいたとし、それは夏目漱石とレーリー卿だと断ずるのですが、著者の勝手な思い入れと解釈で、真実は違うのではないかと思わざるを得ません。
寅彦には夏目が人生の師であり私淑したことは確かでしたが、彼を通して“高等遊民”的な人生感を学び、感化された「音響理論」を上程したレーリー卿が偶々“高等遊民”的な生き方していたことに憧れたのかも知れないと考えるのが妥当だと思うからです。
しかし、著者の寅彦に対する判断は以下の点では納得出来るものがありました。
20世紀初頭は物理学の“疾風怒涛”の時代で、こうした嵐の吹き荒れる時代に身を置いた寅彦は、古典物理学の世界に専心し、科学解説サイエンス・コミュニケーションと言う試みを行い、新しい潮流にも力を入れると言う“棲み分け”をしながら、物理学全体を視野に収めた稀有な存在であった。
アインシュタインの「相対性理論」が発表された際に、その素晴らしさを認識した世界でも数少ない物理学者の一人とされていることから、そのことが分かります。
彼が研究視点を分散せず、新しい物理学研究に専心することがあったら日本人初のノーベル物理学受賞者になったことだと思われてなりません!
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