月曜日, 11月 07, 2011

変換効率36.9%の太陽電池

太陽電池は光電効果で太陽光から直接発電する方式ですが、変換効率の低さが災いして大規模化するには設置面積が大きくなり過ぎる欠点があります。 太陽電池実用化開始時点では10%に満たなかった変換効率も20%を超えて来ていますが、初期投資が過大で、補助金無しの事業展開は無理だと見ていました。 その変換効率が目標値の40%に近づいて来ていると言う注目すべきニュースがありました。 形式は良く知られているSi結晶系ではなく、化合物太陽電池とのことで、コストが高いことが難点の様に思われます。 In(インジウム)、Ga(ガリウム)やAs(ヒ素)などを用いることから主に人工衛星などの用途に限られる様ですが、資源再利用を含めたコストダウンで地球上での一般住宅や車等への技術的波及効果を期待して注目して行きます。 シャープは「化合物3接合型太陽電池」にて変換効率36.9%を達成したことを発表した。 化合物太陽電池は、Si結晶系に比べて高い変換効率を実現出来るが、コストもSi結晶系に比べて高くなってしまい、Ga(ガリウム)やAs(ヒ素)などを用いることから一般住宅ではなく主に人工衛星などの用途に用いられている。 同社は2000年から違う波長の光吸収層をGaAs基板からトップ/ミドル/ボトム層の順に積み重ねて、最終的にGaAs基板から切り取ってさまざまな別の基板に転写することで高効率化を実現する「化合物3接合型太陽電池」の開発を進め、2009年にはボトム層を従来のGeからInGaAsに変えることで3層を効率よく積み上げ、かつ取り出せる電力をより向上できる技術を開発し、変換効率35.8%を実現していた。 今回の研究では、その3層に積層された太陽電池の各層を直接につなぐための必要な接合部の抵抗を低減させることで変換効率の向上を実現した。 将来的には量子ドットなどを4層目として挿入し、4層構造とすることで、さらなる効率の向上を目指しており、通常の地上での変換効率40%、集光型太陽電池での変換効率50%の達成を目標として開発を進めていくとしている。 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が掲げる太陽電池の変換効率の2014年目標値は達成済みで、2025年目標の宇宙37%、地上40%、集光50%を実現させる段階に入りつつある 放熱板との一体化による集光型での高効率化やフィルム転写によるフレキシブル化、GaAs基板の再利用技術の模索などを進めることで、量産効果/リサイクルによる低コスト化の実現を目指すとしている。フィルム型太陽電池が実用できれば、重量とスペースの問題が常に付きまとう宇宙機にとってもブレークスルーとなる可能性も考えられる 化合物太陽電池に関しては、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が評価を進めており、2013年には部品認定を受ける予定で、宇宙での実証実験を経た後、2014~15年頃には実用化としたいとしている。

日曜日, 10月 23, 2011

角栄礼賛のドキュメンタリー-日中国交正常化(中公新書)

田中角栄には金権政治のイメージがあり、その亜流たる小沢一郎もマスコミで叩かれ放題の状況にあります。 しかし、懸案の日中国交正常化を、日米安保体制と両立させ、台湾との民間交流を続けつつ、一気呵成に成し遂げた功績は、日本の国益を考えるとやはり認めなければなりません。 その際の日中共同声明は前文と9項目の本文からなり、両国にとって国情を反映した妥当な声明であると思われるのです。 本文第7項目: 日中両国の国交正常化は、第3国に対するものでない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域に於いて覇権を求めるべきでなく、この様な覇権を確立しようとする他の如何なる国或いは国の集団による試みにも反対する。 しかしながら、近年中国の覇権主義が台頭して、その精神に悖る海洋権益拡大の動きが出て来ていることには残念な思いがしてなりません。 著者は次の様に自分の思いを述べていて、自分の論理に陶酔している感もするが、私の息子世代である若さも、その探求心故にそれなりに評価してあげたいと思うのです。 田中と大平の個性が共振する姿を外交交渉を描きつつ、あり得べき政治指導の姿を探し求めた。政治指導のあり方は、少なからず官僚の使い方に現れるもので、彼らの果たした役割も、インタビューを通じて正当に評価しようと心掛けた。 近年、政治家が官僚との対決を標榜する傾向が見られるものの、少なくとも外交に関する限り未熟な方法と言わねばなるまい。 本文第3項目: 中華人民共和国は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する。 近頃、マスコミも中国政府の宣伝に乗せられて、台湾は中国の一部であることが既成事実の様な論調も目立つのだが、共同声明では、両国の主張併記で、日米安保体制にも抵触させない配慮がなされていることに、改めて確認したいと思うのです。 又、尖閣諸島については、周恩来首相は、日本が実効支配する領土について自国から発議するのは外交上得策では無いと認識し「尖閣諸島について話すのは良くない。石油が出るから問題になった」と話を打ち切ったと言う。そして、対ソ戦略を重視する百戦錬磨の周首相は、日中共同声明の調印を急ぎつつ、日本外交の不慣れさを救ったのだとの逸話が載せられているのは、日本国民として感謝・留意したいものです。 近年の中国外交部には、覇権主義が横溢して、その様な偉大なステーツマンが皆無となりました。

土曜日, 10月 15, 2011

Indignez-vousをAmazonで購入予約

著者ステファン・エッセルは93才、第2次世界大戦のレジスタンス闘士で、ユダヤ人であるにもかかわらず、イスラエルを糾弾する積極的な活動を続けている稀有な人物の様です。 世界的に若者の抗議運動が熱を帯びていますが、フランスではベストセラーとなって、若者たちのバイブルにもなっていると報じられています。 僅か20ページ程の小冊子で、この年末にも邦訳が出版されるとのことですが、フランス語の再学習を込めて、Amazonで購入予約をしました。 1 "Indignez-Vous!(憤激せよ)" Stephane Hessel; ペーパーバック; ¥ 385 2 "Time for Outrage!(怒りの時)" Charles Glass; パンフレット; ¥ 485 どうも在庫は無いらしく、入手は11月4~13日と4週間程度掛るとのことです。配送料を含めて1000円程度と考えています。 インターネットで“Indignez-vous”検索しますと、著者に対するインタビューが多数見つかりましたが、93才と言う高齢にも拘わらず、矍鑠たるものがありました。 indignez-vous--de-stephane-hessel-quand-un-ancien-resistant-parle-d_engagement ステファン・エッセルは、1917年ベルリンで生まれ、1925年にフランスに移住。両親はユダヤ人。父親はプルーストをドイツ語訳した人で、母親は画家。 1937年にフランス国籍を取得。第二次大戦でドイツ軍の捕虜になるが、脱走してロンドンのドゴール将軍の指揮下に入る。 1944年フランスの戦線に戻るが捕えられ、ドイツの強制収容所に移送される。脱走に成功するも再び逮捕、またまた列車から飛び降りて逃亡し、アメリカ軍に加わる。 戦後は国際連合事務局に入り、世界人権宣言の起草に寄与。 アルジェリア戦争当時は、アルジェリア独立運動を支持。1981年ミッテラン大統領によって、フランスの国連大使に任命される。現在、ユダヤ人であるにもかかわらず、パレスチナ人の側に立ってイスラエル商品ボイコットのキャンペーンを行うなど、積極的な活動を続けている。

木曜日, 10月 06, 2011

通貨を知れば世界が読める-PHP新書

著者の浜矩子(はま のりこ)女史は、度々TVに出演しているが、なかなか説得力のある解説者だとコメントを傾聴しています。 一橋大学は、哲学的な方向付けよりも、実務的な経済学者を輩出していることで知られていますが、彼女もそうした基本方針で育てられた人材の一人の様に思われます。 基軸通貨の米ドルが危うくなり、後継とも目された欧州ユーロも先行きが不安視される中、著者の定義は納得出来るものがあります。 「その国にとって良いことが世界にとっても良いことであると言う関係が成り立っている国の通貨」が、国際的基軸通貨と呼ぶに価する。 大英帝国が世界の富を一手に握った「パックス・ブリタニカ」の時代のポンドがそうであり、第2次世界大戦後の「パックス・アメリカーナ」の時代のドルもそうであった。 それを踏まえた現状分析は、甚だ厳しいものがあります。 2000年代も後半になり、通貨を取り巻く状況を大きく変えた二つの「まさか」が起きた。2008年のリーマン・ショック、及び2009年のギリシャ金融危機である。 前者は、既に実質的には基軸通貨の座を降りたにも拘わらず、それを認めようとしないアメリカへの退場勧告とも言うべきものであり、後者は、ドルに替る基軸通貨として期待されたユーロが、その役割を果たせないこと、更に、その存在すら危ぶまれるものだと言うことを示す警戒シグナルであった。 円高圧力の強い日本の現状分析には、円を裏基軸通貨として展開するのが良いとし、日本人を鼓舞させようとする意図が強い。 今回の東日本大震災で、地球的なサプライチェーンがどれだけ大きな影響を受けたかを考えても、グローバルな次元での日本の社会的責任は大きい。円が動けば世界が揺れる、日本の物作りが揺らげば世界が倒れる。成熟債権国は、自らの行動や降りかかる命運の波及効果を常に意識しておかなければいけない。 明らかに、子供じみた振る舞いとの決別の時が来ている。大人の国の大人の通貨を大人らしく管理する覚悟が求められている。 強い通貨と豊富な債権、そして知恵と工夫を用いて、如何に豊かな国を築いて行くかが問われていて、日本が前人未到の大人の世界を自力で開拓することは、日本型ジャスミン革命となるのではないか。 大きな政治的課題であるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)には、基本的には反対の様で、21世紀食糧自力調達が問われている現状を踏まえてかは不明ですが、納得出来るものがあります。 TPPは、環太平洋の国々が協定を結んで自由貿易圏を作ろうと言うものであるが、要は特定地域の囲い込み政策で、いわば集団的鎖国主義である。基本的に閉鎖主義的な対応である。 通貨と通商の世界における自己防衛的囲い込みが、地球経済をズタズタに分断して行くのが最悪のシナリオで、其処に向かわない様に、債権大国の誠意ある大人の外交が問われる処だ。

木曜日, 9月 29, 2011

数学は矛盾しているか不完全のどちらかである

先日本屋に行って、気軽に読める新書本ではなく、偶にはじっくりと読める図書を探していましたら、ゲーデル著「不完全定理」と言う岩波文庫がありましたので、買って帰りました。

51年昔、教養学部での数学の講義は、高校時代での問題を解くことを主にする授業と違い、定義を大切にする意味合いが強く、興味深いものでした。
解析学では、当時微分幾何学の気鋭学者である長野正氏が講師で、参考書は高木貞治著「解析概論」と言う名著でした。
代数学では、講師は森繁雄氏で、受験参考書で知られていた人で、スミルノフ著「高等数学教程」を参考書として勧められました。
その後、工学部に進みましたので、数学講義も純粋数学から応用数学へ転換し、犬井鉄郎氏の講義となりましたが、やはり興味をそそるものがあったのです。

企業に入り、応用数学適用の命題が多く、寺沢寛一著「数学概論」を参考にすることも多くなり、業務上の難問解決の為、微分方程式の構築、行列知識の適用・応用等には心血を注いだものでした。

しかし50年を過ぎて、頭もすっかり硬くなり、純粋数学書では、なかなか読み進めることが出来ません。
やはり、工学者の弱点でもあるのでしょうか、物理的意味合いの無い命題を、数学的に理解する意気が続かないのです。

1.形式系と呼ばれる論理学の人工言語で記述された数学は、その表現力が十分豊かならば、完全且つ無矛盾であることはない。(第一不完全性定理)
2.形式系が無矛盾であると言う事実は、その事実が本当である限り、その形式系自身の中では証明出来ない。(第二不完全性定理)

20世紀最大の数学者ヒルベルトは、数学における合理性を究極の形で確立すると言う、極めて近代ヨーロッパ的な目的を担っていたが、上記ゲーデルの不完全性定理が結果的に合理性に対する素朴な信頼性に否を突き付ける形になった。
その為、数学の定理でありながら、西洋哲学、心理学、思想、情報学等の研究者を引き付け、様々な影響を与える結果となっている。


解説が面白いので、もう少し読み進めますが、読破する自信は全くありません!

我が家の本棚には、永らく使われたことが無いまま、高木貞治著「解析概論」、寺沢寛一著「数学概論」、スミルノフ著「高等数学教程」12巻は、寂しく眠っています。

木曜日, 9月 22, 2011

LEDナツメ球

先日、蛍光灯の真ん中についていて常夜灯に使うナツメ球(豆球、ベビー電球)が切れましたので、100円ショップに買いに行きました。

!従来のナツメ球は白熱電球タイプで、フィラメントが光り消費電力は5W程度のものが一般的です。
105円で2個入っているのが売られていましたが、同じ棚にはLEDナツメ球1個が105円で陳列されていましたので、LEDタイプのものを購入することにしました。

蛍光灯の真ん中に付いているナツメ球(豆球、ベビー電球)は、LED光源のものが数年前から実用レベルになって来ている様です。
LEDタイプの消費電力は0.5Wと白熱電球タイプに比べ、1/10に過ぎませんのも魅力です。

玄関外灯、階段灯、トイレ灯等の60W白熱電球はLED電球に取り換えましたが、従来の白熱電球が100円程度で買えたのに比べ、2000円とは高過ぎますので、風呂場灯、玄関内灯は800円程度で買える蛍光灯タイプのままにしてあります。
それでも、消費電力は1/5にはなるからです。
ランニングコストが安いため、短期間使うだけなら白熱電球がお得、長期間使うならLED電球が良いと言われますが、イニシャルコスト次第だろうと思っています。

しかし、LEDナツメ球は従来のものに較べて、2倍程度の価格で手頃、他の場所も取り替えて行こうかと思っています。

木曜日, 9月 15, 2011

星と嵐(五つの北壁登行)

森林浴を満喫するべく、時々日帰りで低山トレッキングをしています。
日帰りとするのは、噴き出た汗をゆっくりと自宅のシャワーで流しつつ、疲れた体を休めるのが快適と思っているからなのです。

何と言うことは無く、手に取ったガストン・レビュファ(Gaston Rebuffer)と言う著名なアルピニストの登攀記を読んでいますが、到底及ぶべくも無い別世界が繰り広げられていました。

もしも私達が登るのを止められて、「何故山へ行くのか?」と言う避けられない質問をされたなら、今日の私達は直ぐにこう答えただろう。「僕たちは山に登る為に出来ているんだ」。
本能、岩への愛、テクニック・・私達は何故登るのかと言った疑問には、付き纏われないで登って、全てが幸いしている。


森林限界を越えた岩壁でビバークすること等は、あまりに難行で、想像出来ずにいる程です。
それですので、登攀記と言うより紀行文と読み進めますが、マッターホルン北壁行はその描写力に読み応えがあります。

マッターホルンはその母岩から外皮を脱ぎ去った山、その構造と飛躍ぶりには幾何学的な厳しさがある。他のどこの山より、マッターホルンは理想的な峰で、一度も山を見たことは無い子供達が思い描く山だ。
この山は孤立した峰だけに、その美しさは格別で、周囲には崩れた岩屑の荒れ地、低く身を屈した寝ぼけた様な峰々があるに過ぎない。
北壁? 何と不愉快な登攀、それでいて豪奢な登山であることか!
天に向かってそそり立つピラミッドの頂上で、か弱い人間の私達は、地球が眠りにつく場面に立会い、地球と共に夜に身を委ねる。


28年前に、ゴルナーグラート駅からリッフェル湖駅迄、山下りを1駅間だけ家族4人でしたことを思い出しました。
Gornergrat

下りでしたので息が切れる訳でもありませんでしたが、富士山頂を越える高さでアルプの世界、周囲は殆ど瓦礫だらけで、その下は永久凍土の世界だったと記憶しています。

木曜日, 9月 08, 2011

学校秀才の内部告発-官僚の責任

財務省と並んで、キャリア組のエリートが集まる省ともされる経産省生え抜きの改革派キャリアの内部告発なのですが、今話題となっている松下政経塾と関係の深いPHP新書であるのが気に掛ります。
彼の名は古賀茂明、仙石由人の彼に対する脅しは、2010年7月に辞任を、9月にイジメ出張を強要、10月の覚悟を決めて古賀審議官が国会参考人発言したことに、意味の無い公開恫喝を行ったことで、一躍知られることとなりました。

彼は、次の様に分析していて、正鵠を得ている様に思われます。

日本の官僚は優秀でも公正でも中立でも無い。「官僚組織は最高の頭脳集団」は単なる幻想に過ぎなかった。
「世界一」と我々が信じ、拠り所にして来た日本の技術力の高さが、原発事故の対応の拙さから、実は幻想に過ぎなかったと言う現実が明らかになったと同じ様に、日本の官僚も、専門知識に乏しく、判断も決断も出来ず、自分では責任を取ろうとしない、素人集団であることを、広く国民の前に露呈してしまった。
原子力の分野に留まらず、財政悪化させたことから明らかな様に、財務官僚のレベルもお粗末なもので、あらゆる分野で日本の官僚は世界標準に較べて相当遅れていると言わざるを得ない。
それどころか、今や危機的状況にある国を食い潰し、崩壊させかねない存在になっていると言っても過言では無くなっている。


しかし、実務経験に乏しい学校秀才の出自による限界なのか、本書後半の提言で「官僚や政治家という既存の枠組みの中で、国家を憂う人達が集まれば、未だ何とかなる」との認識には大きな違和感を持たざるを得ません。

「東大法科卒エリートが国を動かす」と言う永らく是認されて来た方針は、東京電力、保安院やエネルギー庁という役所に見られる傲慢な意識や計画性の無さは、失敗だったことを示しています。
其処で、政治家や官僚の思惑で何かを決めるのではなく、国民の強い意志を反映させた産学政官共通基盤で国民を導く体制を構築すること、後世の検証に耐え得る組織が要求されているのです。従前のキャリア組主導方式では上手く行かないのですから・・

上記の如く、起承転結の「転」部分には肯ずる訳には行かない処がありますが、「結」部分には納得出来るものがあります。

消費増税に踏み切るのが責任ある政治家だとの誤解があるが、そうでは無く、既得権益グループと戦える政治家こそ真の責任ある政治家なのだ。消費増税を小さくしても大丈夫な道筋をつけることに命を賭けて欲しい。
そして公務員改革を断行して官僚が真の政治家を全力で支える、それが理想だ。

火曜日, 5月 31, 2011

スマートグリッドは何処に行ってしまったのか?

ベース電力となっていました原子力発電が疑問を持たれる様になって以来、東電も自信を持って宣伝していたスマートグリッドの話題はすっかり霞んでしまいました。

太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの導入に、スマートグリッドを構築する必要性は高い。
太陽光や風力などは、その発電量が天候や気候に左右され、非常に不安定だ。更に、電力需要が少ない時に供給量が増加してしまうと、送電・配電線に大量の電力が送られ、負荷をかけることになってしまう。そのため、需要と供給のバランスを調整するなどの系統安定化策が不可欠。
具体的には、大型の蓄電池を設置することで電力をプールする方法や、電気自動車の蓄電池としての代替利用、コージェネやガスエンジンといった機器の電力源としての利用など、他の設備に余剰分の電力を移す方法がある。
停電対策よりも再生可能エネルギーの導入のために推進される日本のスマートグリッドだが、その仕組みづくりには、関連する多くの分野からの協力体制が必要になる。


次世代インターネットの経済学-依田高典

2011年現在、日本のブロードバンド・インフラは有線も無線も世界一である。それでも、医療のデジタル・オンライン化は遅れ、中小企業のICT利用も課題が多い。
他方で、インフラ整備で後れを取るアメリカでは、GoogleやAmazonなど時代の寵児が、Microsoftの牙城を脅かす迄に成長した。世界の最富国アメリカのことだ。インフラ整備の遅れは10年で取り戻すことだろう。
その時、ガラパゴス化した日本に何のアドバンテージが残るのだろうか?

そんな思いで、研究テーマをスマートグリッド・エコノミクスと決めた。スマートグリッドとは、ICTを有効利用し、電力系統の効率化を図り、環境に優しい分散型電源の導入を促進し、消費者の省エネ行動の変容を促すエネルギー産業のイノベーションである。
ブロードバンド・エコノミクスと行動経済学の研究成果を一段高いレベルで統合するものと言って良い。


近頃話題となっている「光の道」の根幹となるFTTH(Fiber to the Home)、固定・携帯電話の融合サービスMC(Fixed-Mobile Convergence)にも識見に満ちた解説と提言があり、時宜を得たもので読んでおきたい書籍だと思われます。