著者の霜月十三星(しもつき とみほし)氏とお会いしたのは、唐木田駅前にある喫茶「友愛」、丁度店内にモーツアルトの音楽が種々流れている時に、話が始まりました。
霜月氏は「ベートーヴェンは良いが、モーツアルトは分からない!」と言うので、私は「気分が落ち込んだ時は、ベートーヴェンは勇気づけてくれるが、モーツアルトは更に落ち込み、精神が充実している時で無いと聞けない。」と応じたのです。
すると霜月氏は「画家モネも貧乏でたいへんでした」と話題を変えましたので、私は「ジヴェルニーでは、平安な生活をして晩年は裕福で幸福だったのではないでしょうか?」と言いましたら、上記の書籍をカバンから取り出して、「どうぞお読みください!」と贈呈してくれました。
ブックカバーには「フランスの芸術家達に多大な影響を与えた、北斎や広重の描いた日本の美。そして、誰よりもその美しさを追求した画家モネと娘マリーが、情熱をかたむけた日本への憧憬を綴る」と紹介されています。
冒頭に「ゲーテの色彩論」が述べられているのに先ず驚きました。これは、大学時代の独文学教科書で、難渋なドイツ語だったと記憶していたからで、遠き思い出を引き起こされたのです。
読み進む内に、「モネの考えを言葉で表現し、理解するには手間は掛らない。彼にとっては、全てが現在形で、過去も無く、未来も無い。人間の無我があるがままの自然に吸い込まれていく。それが美の本質なのだ」と言う核心に近づきます。
カントは「人は哲学を学ぶことは出来ない。ただ哲学することを学び得るに過ぎない」と言っている。
この主張に従えば「人は美を創造することは出来ない。美を創り出す方法を模索し得るに過ぎない」
モネの人生は、東洋の美を模索したひと時であったのか?
人類は皆、限られた生命と寿命の範囲で、絶対への軌跡を描きなぐって行くのみなのか?
そうエピローグで哲学することで結んでくれますので、読後爽快となりました。
閑話休題:著者本名は平林治雄。1925年11月13日生まれをペンネームとしたとのこと
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