私は原子力工学者では無いのですが、「夢の原子炉」と言われた高速増殖炉もんじゅを見学させて貰ったのは1995年春のことでした。
1994年臨界に達し、1995年秋の本格運転に向けての定期検査の最中で、運営は動燃(動力炉・核燃料開発事業団)、ウラン補給不要のプルトニウムを再利用するMOX燃料を使う核燃料サイクルの中核となるもので、新技術開発の希望が膨らんでいる時期でした。
MOX燃料の核分裂はウラン燃料に比べて核分裂速度が速く、原子炉冷却が冷却水では出来ず、高温の金属ナトリウムを使用するのが売りでも懸念でもありました。
ナトリウム漏洩事故(国際事故評価尺度レベル1)の隠蔽工作等が批判され、動燃は解体、その後運転再開の見通しの無いまま、運営を日本原子力研究開発機構に委ねることになりましたが、インセンティブの無い保守管理だけでしたので、士気も上がらず企業の協力も得られずに点検でも多くの不備が指摘される様になり、今日の勧告に至りました。
原子力規制委員会は、安全管理上のミスが相次ぐ高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)について、運営主体の日本原子力研究開発機構は「不適当」とし、新たな運営組織を見つけるよう馳浩文科相に求める勧告をまとめた。半年以内に適切な運営主体を示せない場合、もんじゅのあり方を抜本的に見直すことも求める。
もんじゅは2012年機器全体の2割に当たる約1万件で点検漏れが発覚、規制委は2013年に原子炉等規制法に基づく運転禁止命令を出し、原子力機構に管理体制の見直しを求めたが、その後も新たな点検漏れや機器の安全重要度分類のミスなどが次々と発覚するなど改善されなかったため、初の勧告に踏み切った。もんじゅは過去に約1兆円、年間約200億円の国費が投入されたが稼働実績はほとんどない。
もんじゅは高速増殖炉の原型炉、使った以上の燃料を生み出すため「夢の原子炉」とも言われ、水を使う一般の原発と異なり、核分裂で発生した熱吸収を液体ナトリウムで行うのが特徴ですので、ナトリウムは水分に触れると爆発燃焼するので、高度な技術が求められます。
もんじゅ運営に関して、原子力機構に代わる新組織を見つけるのは難しく、もんじゅを中核とした国の核燃料サイクル政策は大きな岐路を迎えることになりました。
今年も日本人のノーベル賞受賞者がいましたがそれは過去の産物、近頃の建設業の杭打ち不正等を考えますと、日本の技術水準は難局を切り開く進取の気勢が無く、衰えて来ていると思わざるを得ません。
土曜日, 11月 14, 2015
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