日曜日, 8月 16, 2009

佐々木毅の「政治の精神」-岩波新書1189

今を時めく21世紀臨調共同代表である佐々木毅氏、元東大総長の肩書もあり、総選挙間近い時期、時宜を得たものとも思えますが、別の見方をすれば、一寸時流に阿り過ぎた不満もあります。

著者は次の様に主張していますが、どんなものでしょうか?

マニフェスト(政権公約)をツールとした政党政治改革提案は、余りにも肥大化した密教部分を可能な限り押さえ込み、顕教型体制の正当性を復活することによって、政治的統合機能を回復させるという基本構想に沿ったものである。言い換えれば、戦後自民党が作り上げて来た仕組みはもはや維持できないし、維持すべきでないと言うことである。
政党間の競争と選択の内実を政権公約をツールとして質的に向上させることである。個々の問題を一つ一つ潰していくよりも、大きく全体を動かすことが肝要である。全体が動けば、一つ一つの厄介な問題も解決の目途が立つ。漫然となんとかなると言った感覚から脱出して、選挙に対する政党の態度や取り組みを冷静に判断する有権者の存在が、この質的向上には不可欠である。総選挙は「政党政治の精神」の最大のテストの場であり、政権公約はその中の不可欠な装置であると言うのが私の主張である。


著者は、政治制度並びに体制理解を是とし、その制度並びに体制がもたらす処の脆弱でない政治的統合に於ける政治が肯定されると考えるのである。そこに民主主義の理念よりして問題あるものが出来したとしても、それが政治的統合の強さもたらすものであるならば、積極的に肯定される意義を有すると考えてしまうのだ。

東大政治学の権威で総長であった人物が、その重責・権威の欠片も無く、あまりに時流に阿る曲学阿世の徒ではないかと思わざるを得ません。東大政治学も説得力を持たなくなりました。