土曜日, 3月 15, 2008

ルポ貧困大国アメリカ-岩波新書(堤未果 著)

著者の堤未果女史は年齢不詳とされていますが、30才位の新進気鋭のジャーナリスト、マスコミ業界に阿ることも無く、ルポ報告での舌鋒鋭い指摘は新鮮そのものです。
アメリカに倣って経済自由主義・格差是認のグローバル化を直走る日本の現状・近未来に対する警鐘だと見ても差し支えありません。

嘗て「市場原理」は、バラ色の未来を運んで来るかの様に謳われた。競争によりサービスの質が上がり、国民生活がもっと便利で豊かになると言うイメージだ。
政府が国際競争力を規制緩和や法人税の引き下げで大企業を優遇し、社会保障費を削減することで帳尻を合わせようとした結果、中間層は消滅、貧困層は「勝ち組」の利益を拡大するシステムの中に組み込まれてしまった。
グローバル市場において効率良く利益を生み出すものの一つに弱者を食い物にする「貧困ビジネス」がある。

「サブプライムローン問題」は単なる金融の話では無く、過激な「市場原理」が経済的弱者を食い物にした「貧困ビジネス」の一つだ。
アメリカで中流階級の消費が飽和状態となった時、ビジネスが次のターゲットとして低所得者層を狙ったのが「サブプライムローン」、そこでは弱者が食い物にされ、使い捨てにされ生存権を奪われて行く現実がある。

この世界を動かす大資本の力はあまりに大きく私たちの想像を超えているし、現状が辛いほど私たちは試される。
しかし、現実を正確に伝えるべきメディアが口をつぐんでいるならば、表現の自由が侵されている状態に声を上げ、健全なメディアを立て直す。それも私たち国民の責任なのだ。


新鮮な感じのするルポ報告とは言え、何か「アジテーション演説を聞いている様な錯覚に陥ることも無きにしも非ず」と言う処で、このルポに迎合して庶民の声を上げて行くには短絡すぎる気もしないではありません。
その様な懸念を払拭するには、自分の頭の中で論理再構築することも考えなければなりません。